敢えて、「なにが…?」と記すけれど
ピアノの音をさせたのかなぁ…、
湿度とか風? の自然のイタズラ?
或いは、なにか秘められた想いを伝えたい霊の様な…?
考えながら、隣家の他界した奥様を思い出していた。
1人娘は既に嫁ぎ息子が1人生まれ、近所に分譲マンションを購入し、住んでいる。
以前は中日ドラゴンズの二軍監督の一家が住んでいたが、その後を購入して、御主人との二人暮らしだった。
品が良く、いつも静かで、ほほ笑みの顔しか思い浮かばない。
入居して、暫くして小型の白い愛犬をなくされた。
それから、数年して、ピアノの練習を始められ、幼い子供の習うレベルからで、
少しづつ、曲に進んで、わたしの部屋の駐車場側じやない方の、窓の真ん前で練習しているから、耳で追っていると、音の間違いや、つまずいたように途切れるのも楽しく聴いていた。
レパートリーも増え始めた頃に、パタリと止まってしまった。
暫くして彼女が訪ねて来て、悪性腫瘍で治療していたが、治療の苦しみに耐えられない。
覚悟して家族と数日間、東京を楽しんで思い残す事はないので、お別れに来たと。
私は新しい治療法も進んでいる為、諦めずに治療法を変えてでも、生きる事をお勧めしたが二日して、長い、美しいペン字の御便りを頂いた。
それを持参して下さった時が最後のお別れになってしまった。
朝夕の、時には3回程のビアノを練習する音は聴こえなくなった。
もし、私が筆者の様に不思議にピアノの音が聴けたなら、お隣の奥様の雅子さんが弾いたと思うだろう。
わたしは雅子さんが好きだったから、淋しく思い出していた。