「卑怯者」
という有島武郎の作品に随分前、多分、朗読を聴き始めた頃に触れてからファンになったけれど、「或る女」でウンザリし、遠のいていた。
私は予てより何度も記したけれど、ジャンルに関係無く、良いと思うと、作品を成した人の事までもを知りたくなり、調べる癖があり、有島武郎についても当然、調べた。
亡き奥様は美しく、有島も深く愛していたが、今回の作品の中にある通り、早く失っている。
豊かな家柄で、子供たちや家の事は使用人がいて困る事もなかった。
執筆活動に関わる事で訪れる出版社の1階のカフェの様な所に、人妻ながら、出入りする男性全てにイロメを使う毒婦の様な女が働いていて有島を誘惑する。
有島だけが「君は人の妻ではないか?!」と叱責し無視するが、なびかないと意地になって執拗に有島を誘惑し、有島はとうとう術中にはまり、ねんごろになってしまった。
しかし女の夫の知るところとなり、この男がまた悪い人間で、有島を恐喝し、
有島は精神的に追い詰められ、女と軽井沢の別荘で情死する。
父親と妻を相次いで失うが、執筆活動は順調で、この「秋子」との事が無ければ、更に多くの良い作品を遺せたかと残念です。
俳優の森雅之氏(とはいっても大正12年?かな没です)は有島の息子です。
当時の結核は、絶望すべき病ですが
ストレプトマイシンが開発されて今なら容易に助かるから、奥様が命を落とす事もなかったろうと思います。
結核と分かってからは決して子供に会わない決心をされていた話は涙をさそいます。
私は有島の幸福な家庭の頃は知らず、
この朗読により、1片を知り得ました。
多分、愛情深い理想の家族になったろうに、と、聞き終えて思いました。
親の愛情の深さをより、教わりました。