猫は苦手だった。嫌いとかではなく、ただ怖かった。犬は子供の頃から馴染んでいたけど、足音がしなく眼の表情の意図が判らず…。マルチーズの男の子のリックとラッキーと暮らしている時に勝手口ドア開けた瞬間、ワンコの間を平気で人すり抜けてベージュ色の大人の、首輪を付けた猫が入って来た。怖くて、後から人で言えば脇の下に手を入れて抱かない様にして外に出した。勝手口を開けるのが怖い位に毎日の様に来る。幾度も同じ事を繰り返し、ある2月の雪の降る日の夕方に庭のタイルのポーチの上にうずくまり背に雪が積もっていた。怖いけど、凍死しかねないと思い、開けたら入って来て、今から思いなおすと無知の極みだけど、リードを首輪に付け大きいクッションに載せて、「今夜だけだよ。」と言って何か食べさせた覚えがある。毎晩の様に来て、特にワンコともケンカも無く朝になると出て行く。かわいい気持ちにもなり交通事故にあわないかも心配になって首輪に手紙を付けて、半月間に外されていなかったら、うちのこにしようと思った。大きな理由は2つ。特に帰宅する時に、殺したらしいトカゲや小鳥を度々お土産にもちかえる(心底イヤだった)。交通事故で死んだり怪我したりしないか心配になった。手紙は外される事なく、溜め息ついて諦め保護する事にした。まず動物病院に連れ行き、検査や予接種やらetc…、あげく避妊手術も、と言われ随分な費用もかかったのに開腹したら、手術済だった。1歳位の女の子といわれ「さやか」と名づけ、それから17年半位生きてくれた。めちゃめちゃ頭が良くて窓のクレッセントキーのロックを外して鍵も外し、ガラス窓を開け網戸を開けて外出する。閉めてあるどの部屋にも出入りし、いたずらをする。私の肩の上で襟巻状にいつまでも乗っかる。コートを着ている時に胸に抱かれに来て、頭から袖の中に潜ったり、置いてあるバッグには必ず入ろうとする。壁紙剥がしたり畳は引っ掻いてダメにし、網戸を全て破り、襖や障子を破り、カーテンを駆け上がったりしてダメにし… 家をリフォームさせられた。入力している間に先に記した様な可愛かった時のこと、思い出した。クールな、猫らしい猫だった。さやが来てから我が家からテーブルクロスや花を飾る事がなくなった。