江戸時代の呉服屋は、店が火事になったら、真っ先に大福帳(顧客名簿)を持って逃げるか、
大福帳を井戸に投げ込んで逃げたのです。
反物(着物生地)なんかが燃えていても、そんなものは放っておいて、まずは大福帳を守るわけです。
大福帳は特殊な紙を使っていたので、墨で書かれた文字が水に浸かってもにじまなかったのです。
そして火事がおさまったら、井戸から大福帳を引き上げて、
商品が燃えてしまったお詫びかたがた大福帳に記載された取引先に1軒1軒挨拶回りをします。
そうすると、お客さんがまた商品を買ってくれるのです。
なので、建物、店舗もまた建て直せますし、商品も仕入れることができるのです。
商品である呉服が燃えた損失は微々たるもの、
それに比べて顧客名簿の焼失の損害は計り知れないということを、
江戸商人は身に染みて理解していたのです。
すなわち、商売で一番の資産はお客様(顧客名簿)ということです。
江戸時代でも、商売を始めるときには他人から名簿を買ってきて、
商売をやめて隠居するときには、名簿を売却してそれを自分の退職金に充てたのです。
まさに「商売は、名簿に始まり名簿で終わる」ですね。
しかし、名簿は結果であり、
名簿を作るまでの顧客との信頼関係を作るプロセスが何より大切なのだと思う。
そういう視点で現在のSNSを考えると、全て信頼関係を作るためのツールだと言える。
信頼を大切にすると、当然リスクを抱えることにもなる。
信頼を作るプロセスを利用して相手を騙そうとする人たちのことだ。
しかし、そのリスクを恐れていたら何もできない。
私は、そのように考える。
商売は、信頼が全てだ。
信頼を紡ぐことによって、
信頼に生かされる。
これは、商売に限ったことではなく、
人生そのものも信頼が全て…。
お金の貯金よりも、信頼貯金。