付き添いで来たのはエミコ叔母さんだった。駅前の喫茶店で、真っ昼間、相手は保護観察官と一緒に来るというので心配はないということだった。
緊張しながら店に入って行き、それらしき姿を探す。
スーツを着た中年の男性と、あきらかに流行から外れた服装の男性が二人で席を立った。僕はどっちが叔父なのかすら見分けがつかなかった。
怒りはなかったわけじゃない。でも、みすぼらしい格好をしていた男性のほうが僕へ駆けよってきて、店の中だというのに僕の足下にしゃがみ込んで、「許し てくれ。ライト、本当に許してくれ。悪かった。ライカのぶんまで謝る。ずっと謝ることしか考えてなかった」と、声を大にして泣き出した。
僕は屈んで叔父の肩に手をかける。
「立ち上がって。許すから。ね、叔父さん、気持ちはわかるよ。許すよ」
「本当か?」
立ち上がったおじはとても小さく弱々しく見えた。もう彼のこと怖いなんて微塵にも感じなかった。
「ライト、この日をどれだけ待ったか」
叔父は僕を強く強く抱きしめた。嫌な感じはしなかった。この人は変わったんだと感じられたから。
それから叔父はなん時間も泣きやまなかった。きっと刑務所の中ではそのなん百倍と涙を流したんだろう。
ライカが許すと言ったんだ、僕だって許す。
そして、僕はわかった。僕自身をも許したことを。これを待っていたんだ。
現実はつらいかもしれないが、もう過去は変えられない。僕はこの先を歩んでいく用意ができた。
「で、どうしてるのかな、最近は。デイケアには出てないみたいだね」
数週間後の診察室で、院長先生に聞かれる。
「大検とろうと思って……」
「それはいいね。マスダさんとデートした?」
「してません」
僕はまた赤くなる。先生もそうやって僕をからかっていいと思えてきてるんだってこと、ひしひしと伝わってきた。
「君はもう卒業かな、ここを」
「──」寂しかった。「お世話になりました」
「またいつでもおいでよ、なにかイライラしたり悩みがあったりしたら」
「わかりました」
と答えたものの、もう来ないだろうことはきっと先生もわかってたんだと思う。
最後に僕はホームへ行き、どこへも続かない階段を登った。もうここはなんでもなかった。いい思い出だった。
帰ろうと思ったとき、ふとエンジ色のタイが落ちていることに気付く。ライカのタイ。まさかな。
でも僕はそれを家に持って帰り、宝箱の中に大切にしまっておくことにした。
──終わり──
緊張しながら店に入って行き、それらしき姿を探す。
スーツを着た中年の男性と、あきらかに流行から外れた服装の男性が二人で席を立った。僕はどっちが叔父なのかすら見分けがつかなかった。
怒りはなかったわけじゃない。でも、みすぼらしい格好をしていた男性のほうが僕へ駆けよってきて、店の中だというのに僕の足下にしゃがみ込んで、「許し てくれ。ライト、本当に許してくれ。悪かった。ライカのぶんまで謝る。ずっと謝ることしか考えてなかった」と、声を大にして泣き出した。
僕は屈んで叔父の肩に手をかける。
「立ち上がって。許すから。ね、叔父さん、気持ちはわかるよ。許すよ」
「本当か?」
立ち上がったおじはとても小さく弱々しく見えた。もう彼のこと怖いなんて微塵にも感じなかった。
「ライト、この日をどれだけ待ったか」
叔父は僕を強く強く抱きしめた。嫌な感じはしなかった。この人は変わったんだと感じられたから。
それから叔父はなん時間も泣きやまなかった。きっと刑務所の中ではそのなん百倍と涙を流したんだろう。
ライカが許すと言ったんだ、僕だって許す。
そして、僕はわかった。僕自身をも許したことを。これを待っていたんだ。
現実はつらいかもしれないが、もう過去は変えられない。僕はこの先を歩んでいく用意ができた。
「で、どうしてるのかな、最近は。デイケアには出てないみたいだね」
数週間後の診察室で、院長先生に聞かれる。
「大検とろうと思って……」
「それはいいね。マスダさんとデートした?」
「してません」
僕はまた赤くなる。先生もそうやって僕をからかっていいと思えてきてるんだってこと、ひしひしと伝わってきた。
「君はもう卒業かな、ここを」
「──」寂しかった。「お世話になりました」
「またいつでもおいでよ、なにかイライラしたり悩みがあったりしたら」
「わかりました」
と答えたものの、もう来ないだろうことはきっと先生もわかってたんだと思う。
最後に僕はホームへ行き、どこへも続かない階段を登った。もうここはなんでもなかった。いい思い出だった。
帰ろうと思ったとき、ふとエンジ色のタイが落ちていることに気付く。ライカのタイ。まさかな。
でも僕はそれを家に持って帰り、宝箱の中に大切にしまっておくことにした。
──終わり──