カウントダウン三日目。
夜中に暴れるおそれがあるというので、手足をベッドに拘束されて眠った。そのせいか熱のせいか、すっきりしない目覚めは続いた。
叔父もこんな感じのところで寝起きしてるんだろうかとか、今頃なにやっているんだろうかと、考えがやたら顔も思い出せない叔父のことに飛んだ。
今日は父が来ていた。会話はなかった。
「──母さん大丈夫?」
あまりの沈黙に苦しくなった僕は口を開く。
「お前は自分の心配をしなさい。ああ見えても母さんはとても強い人なんだぞ」
ぴしゃりと言われてしまった。確かに母さんは強い人だろう。僕なんて比にならない。嫌な現実を受け入れさせられる。自分の世界に閉じこもっていた僕。そ れに対し母はちゃんとライカと対話してるんだから。僕なんかやっと最近ライカという存在が思い出せたばかりだというのに。
それからなん分かなん時間経ったのか、ノックの音がしてきて院長先生がカルテ片手に入ってきた。
「二人のほうがいいだろう。用があったら廊下にいる」
父さんは立ち上がって、出て行った。関わりたくないわけじゃないだろう。気を遣ってくれているだけなんだ、彼なりに、今更どうしていいのかもあるんだろうけど。
「熱が下がらないのは先生たちの陰謀じゃないよ」
先生は点滴のパックをチェックしながらそんなことを言った。
「──は?」
「冗談だよ。どうかな。ぐっすり眠れた?」
「手足を縛られてですか?」
「自分で自分を傷つけるといけないからね」
「傷つけたい相手がいるのにやりませんよ、自分になんて」
「さて、なにが変わった? なにかがそう変えたのかな?」
先生は座らず、僕の横に立っているようだった。僕は上半身を起こす。
「叔父が出てくるのを知ったからでしょう?」
とは答えたものの、あまり自信のある返答じゃなかった。
「どうかな。君は自分を許せたんじゃないかな? だから怒りが他へ向いた」
「僕は自分を許せたんですか?」
そんな気はしてないのに。
「全部じゃないだろう。ある一部分、もしくは大部分で。先生はそう見てるよ」
「先生がそう言うならそうなんですね」
「あはは。自分で決めなさい。そうだね、君が階段の天使の話をしてくれたからだよ」
階段の天使。あんなものは存在しなかった。僕の妄想だった。僕がポイントで作り上げ、ポイントで景品をもらっただけ。明らかな自己完結なのに、先生はそれがとても嬉しいかのような顔をしている。
「人を殺すのは本当に罪なんですか、先生?」
「今の社会では」
「でもたった六年で出てくるくらいなんでしょう?」
「君の六年と叔父さんの六年は、きっと、長さも重みもちがうんじゃないのかな」
「僕ならまだ未成年だし、情状酌量もあるだろうし……」
「もっと短くてすむからやる? ナンセンスだと思わないかな。今まで君の周りが叔父さんのせいで苦しんでいた。今度はみんなを君が苦しめていいのかな?」
「──。そこまで考えてなかった」
ただ、同じことを仕返しとしてしたかっただけで。
「人を殺すとね、殺した人のぶんの人生まで背負わないとならないんだよ。よく考えなさい」
僕は先生がなにを言わんとしてるのかわからなかった。
夜中に暴れるおそれがあるというので、手足をベッドに拘束されて眠った。そのせいか熱のせいか、すっきりしない目覚めは続いた。
叔父もこんな感じのところで寝起きしてるんだろうかとか、今頃なにやっているんだろうかと、考えがやたら顔も思い出せない叔父のことに飛んだ。
今日は父が来ていた。会話はなかった。
「──母さん大丈夫?」
あまりの沈黙に苦しくなった僕は口を開く。
「お前は自分の心配をしなさい。ああ見えても母さんはとても強い人なんだぞ」
ぴしゃりと言われてしまった。確かに母さんは強い人だろう。僕なんて比にならない。嫌な現実を受け入れさせられる。自分の世界に閉じこもっていた僕。そ れに対し母はちゃんとライカと対話してるんだから。僕なんかやっと最近ライカという存在が思い出せたばかりだというのに。
それからなん分かなん時間経ったのか、ノックの音がしてきて院長先生がカルテ片手に入ってきた。
「二人のほうがいいだろう。用があったら廊下にいる」
父さんは立ち上がって、出て行った。関わりたくないわけじゃないだろう。気を遣ってくれているだけなんだ、彼なりに、今更どうしていいのかもあるんだろうけど。
「熱が下がらないのは先生たちの陰謀じゃないよ」
先生は点滴のパックをチェックしながらそんなことを言った。
「──は?」
「冗談だよ。どうかな。ぐっすり眠れた?」
「手足を縛られてですか?」
「自分で自分を傷つけるといけないからね」
「傷つけたい相手がいるのにやりませんよ、自分になんて」
「さて、なにが変わった? なにかがそう変えたのかな?」
先生は座らず、僕の横に立っているようだった。僕は上半身を起こす。
「叔父が出てくるのを知ったからでしょう?」
とは答えたものの、あまり自信のある返答じゃなかった。
「どうかな。君は自分を許せたんじゃないかな? だから怒りが他へ向いた」
「僕は自分を許せたんですか?」
そんな気はしてないのに。
「全部じゃないだろう。ある一部分、もしくは大部分で。先生はそう見てるよ」
「先生がそう言うならそうなんですね」
「あはは。自分で決めなさい。そうだね、君が階段の天使の話をしてくれたからだよ」
階段の天使。あんなものは存在しなかった。僕の妄想だった。僕がポイントで作り上げ、ポイントで景品をもらっただけ。明らかな自己完結なのに、先生はそれがとても嬉しいかのような顔をしている。
「人を殺すのは本当に罪なんですか、先生?」
「今の社会では」
「でもたった六年で出てくるくらいなんでしょう?」
「君の六年と叔父さんの六年は、きっと、長さも重みもちがうんじゃないのかな」
「僕ならまだ未成年だし、情状酌量もあるだろうし……」
「もっと短くてすむからやる? ナンセンスだと思わないかな。今まで君の周りが叔父さんのせいで苦しんでいた。今度はみんなを君が苦しめていいのかな?」
「──。そこまで考えてなかった」
ただ、同じことを仕返しとしてしたかっただけで。
「人を殺すとね、殺した人のぶんの人生まで背負わないとならないんだよ。よく考えなさい」
僕は先生がなにを言わんとしてるのかわからなかった。