翌日、さっそく話題といえばそれしかなかった。
そして、男子生徒はわからないものの羨ましいという声があがっており、女生徒はライカだろうという声と違う娘だろうという声で二分されていた。
「見たか?」
のっぺらぼうに肩をたたかれ、聞かれる。
「あ、ああ、うん」
僕は机に視線を落としながらも、なんとなく肯定はした。
「男、いいな。女の股ぐらから写真撮ってるアングルだぜ。このあとヤったのかな? あの手、胸に伸びてるよな」
「でもなんで学校のサイトを改ざんするようなまねをしたんだろう?」
「そんなのどうでもいいじゃないか」
のっぺらぼうくんとは話が合わなそうだったので、僕は彼のほうに身体を向けているのをやめた。
今の最優先事項、ライカに会うこと。
ちゃんとライカはホームに来てくれていた。
「見た?」
今日はみんな同じ質問しかしない。
「うんざりするほどその話で盛り上がってるよ。望んでたことだった?」
「私じゃなくてヒトミちゃんだって思ってる人がいるのはむかつくけどね。もうサイト、更新されてるよ」
「でも人の記憶には残る」
「人のうわさもなんちゃらってね。そんなもんよ」
彼女が近くに来ると、僕は後ずさった。
「なに避けてんの?」
「記憶がないんだ。あれは本当に僕なのか?」
「そんな……」彼女は急に悲しそうな顔になる。「嘘でしょ、覚えてないなんて。あんなことしたのに……」と声がか細くなっていって、両手が顔をおおってしまう。泣き声が聞こえてきた。でも次の瞬間、「ばあ」と言って笑顔に戻る。
「君って本当に人を怒らすのがうまいな」
「かもね。ライカって、ロシア語でよく吠える犬のことだもん。怒られもするわ」
「え、ライカってカメラのメーカーじゃなくて?」
僕の興味は一気に違う方向へ飛んでしまった。ロシア語だなんて初耳だ。
「カメラ? 知らなーい。初めて宇宙へ行った犬だよ、ライカって」
「あの宇宙犬、ライカって名前だったんだ」
「そう。残酷だよね」
「なんで?」
「宇宙に打ち上げられたきりよ。苦しい死しか待ってないってわかってて」
「そうなんだ……」
苦しい死。姉もくるしんだだろうか。たぶん窒息死は苦しいんだろうな。──ライカ。犬か。
今度は近寄ってきた彼女を避けようとはしなかった。
「お酒べろべろに飲まして、私が写真撮るようにお願いしたんだよ。ホント覚えてない?」
「ああ……」
なんか、そう言われるとそんなだった気もする。悪ノリ。僕の僕じゃないはずの一面。
「べつになにもないって、私たち」
ライカは手を振りながら行った。
そしてぼくは、なぜかなにもなかったことに落胆していた。やっぱり僕は役に立たないんだとか、昔の劣等感がよみがえった。
「早くうわさが消えることを祈るよ」
僕はそう言って、ホームをあとにした。
「祈るんじゃなくてポイントためて!」
ライカが僕の背中に言った。
そして、男子生徒はわからないものの羨ましいという声があがっており、女生徒はライカだろうという声と違う娘だろうという声で二分されていた。
「見たか?」
のっぺらぼうに肩をたたかれ、聞かれる。
「あ、ああ、うん」
僕は机に視線を落としながらも、なんとなく肯定はした。
「男、いいな。女の股ぐらから写真撮ってるアングルだぜ。このあとヤったのかな? あの手、胸に伸びてるよな」
「でもなんで学校のサイトを改ざんするようなまねをしたんだろう?」
「そんなのどうでもいいじゃないか」
のっぺらぼうくんとは話が合わなそうだったので、僕は彼のほうに身体を向けているのをやめた。
今の最優先事項、ライカに会うこと。
ちゃんとライカはホームに来てくれていた。
「見た?」
今日はみんな同じ質問しかしない。
「うんざりするほどその話で盛り上がってるよ。望んでたことだった?」
「私じゃなくてヒトミちゃんだって思ってる人がいるのはむかつくけどね。もうサイト、更新されてるよ」
「でも人の記憶には残る」
「人のうわさもなんちゃらってね。そんなもんよ」
彼女が近くに来ると、僕は後ずさった。
「なに避けてんの?」
「記憶がないんだ。あれは本当に僕なのか?」
「そんな……」彼女は急に悲しそうな顔になる。「嘘でしょ、覚えてないなんて。あんなことしたのに……」と声がか細くなっていって、両手が顔をおおってしまう。泣き声が聞こえてきた。でも次の瞬間、「ばあ」と言って笑顔に戻る。
「君って本当に人を怒らすのがうまいな」
「かもね。ライカって、ロシア語でよく吠える犬のことだもん。怒られもするわ」
「え、ライカってカメラのメーカーじゃなくて?」
僕の興味は一気に違う方向へ飛んでしまった。ロシア語だなんて初耳だ。
「カメラ? 知らなーい。初めて宇宙へ行った犬だよ、ライカって」
「あの宇宙犬、ライカって名前だったんだ」
「そう。残酷だよね」
「なんで?」
「宇宙に打ち上げられたきりよ。苦しい死しか待ってないってわかってて」
「そうなんだ……」
苦しい死。姉もくるしんだだろうか。たぶん窒息死は苦しいんだろうな。──ライカ。犬か。
今度は近寄ってきた彼女を避けようとはしなかった。
「お酒べろべろに飲まして、私が写真撮るようにお願いしたんだよ。ホント覚えてない?」
「ああ……」
なんか、そう言われるとそんなだった気もする。悪ノリ。僕の僕じゃないはずの一面。
「べつになにもないって、私たち」
ライカは手を振りながら行った。
そしてぼくは、なぜかなにもなかったことに落胆していた。やっぱり僕は役に立たないんだとか、昔の劣等感がよみがえった。
「早くうわさが消えることを祈るよ」
僕はそう言って、ホームをあとにした。
「祈るんじゃなくてポイントためて!」
ライカが僕の背中に言った。