通学路と決めた最短距離の道は、マンホールが十個しかなかった。全て踏むには、あらかじめ正確な位置を把握しておく必要がありそうだ。でもたぶん頭に
入ってるだけじゃダメなんだ。道は僕だけのものじゃない。他の歩行者、自転車、車だって通る。それらが通りすぎるのを待つのはルール違反だと思った。僕の
ペースでタイミングよくマンホールの上を通ることができなければ意味がない。と、そこまで厳しく考えたのに、なんの障害もない学校の貨物線跡のホームはい
いんだろうかという疑問が浮かんでくる。簡単すぎる。誰の邪魔も入らない、独り占めできる空間でも同じポイントを自分に与えて本当にいいのか、放課後、待
ちに待ったその場所に立つとあまりの静けさに戸惑った。一ポイントは同じ重さであるべきなのに、ここでは軽すぎる。いっそここのマンホールは数に入れない
べきか、もしくは一つ0.五ポイントにするとか決めないと、僕は自分を甘やかして放課後の学校でポイントをためまくってしまうだろう。そんなことでためた
ポイントの効力を信じられるわけがなく、僕はしばらく考えるためにマンホールを踏まずにホームに座っていた。
「今日はポイントためてないじゃん」
また彼女だ。来ないわけないだろうとは思ってたけど、どこへもつながらない階段の途中にいきなり現れるなんて、どうやってるんだろう。
「学校のデータベースへ侵入した。新入生の中であんたがいちばん興味深かったわね」
ということは、どこまでのことが載っているかわからないにしても、おそらくは校長が言っていたのが最低ラインと考えていいだろう。
「身内に殺人者がいるのは僕だけなのか……」
ぼそりとつぶやいた僕の横へ彼女は来て、座った。
「今のところこの学校ではね。でも、今、刑務所入ってるんでしょ。実害ないじゃん」
「そう願いたいね」
「本人に前科があるとか、そんなやつらはたくさんいるよ、そういう意味ではあんたはクリーン。私もクリーン。なにもバレてないから」
万引き、援助交際、おそらくそれ以外にも色々……。
おもむろに首から提げたカメラを僕に向け、シャッターを切られた。
「──ポイント……」
僕はつぶやく。
「なにするつもり、ポイントで?」
なにするんだろうな、わからないから答えられない、まだ、ただたまっていく過程が楽しいという段階でしかない。
「私は」と、彼女は空に向かって言った。「許しを請う」
だったら許しを請わなくちゃならないようなことをしなくちゃいいのに。僕がとっさに思いついたのは彼女のクリーンの裏側で。
ため息を吐かないようにしていると、彼女は続けた「自分の存在が許せないの。死にたい。っていうか、存在を消したい」
そしてわざとなのか、袖をまくり、自傷行為の痕を見せてくる。
「痛くない?」
つきあいで聞く。あまり興味はなかった。
「痛いから安心する。血が出ればもっと安心する。生きてる証拠だもん。ねえ、自分が生きてるってどうやって感じられるっていうの?」
僕は死んでない。それが全てだ。死にゆく存在と空間をともにし、そして姉が死にゆくのを見たから、僕じゃない、死んだのは。知ってるから、僕は生きてる。
「まだ自己紹介してなかったね。私、ライカ。よろしく、ヤナギダくん。同じ学校の者同士、仲良くやりましょう」
「今日はポイントためてないじゃん」
また彼女だ。来ないわけないだろうとは思ってたけど、どこへもつながらない階段の途中にいきなり現れるなんて、どうやってるんだろう。
「学校のデータベースへ侵入した。新入生の中であんたがいちばん興味深かったわね」
ということは、どこまでのことが載っているかわからないにしても、おそらくは校長が言っていたのが最低ラインと考えていいだろう。
「身内に殺人者がいるのは僕だけなのか……」
ぼそりとつぶやいた僕の横へ彼女は来て、座った。
「今のところこの学校ではね。でも、今、刑務所入ってるんでしょ。実害ないじゃん」
「そう願いたいね」
「本人に前科があるとか、そんなやつらはたくさんいるよ、そういう意味ではあんたはクリーン。私もクリーン。なにもバレてないから」
万引き、援助交際、おそらくそれ以外にも色々……。
おもむろに首から提げたカメラを僕に向け、シャッターを切られた。
「──ポイント……」
僕はつぶやく。
「なにするつもり、ポイントで?」
なにするんだろうな、わからないから答えられない、まだ、ただたまっていく過程が楽しいという段階でしかない。
「私は」と、彼女は空に向かって言った。「許しを請う」
だったら許しを請わなくちゃならないようなことをしなくちゃいいのに。僕がとっさに思いついたのは彼女のクリーンの裏側で。
ため息を吐かないようにしていると、彼女は続けた「自分の存在が許せないの。死にたい。っていうか、存在を消したい」
そしてわざとなのか、袖をまくり、自傷行為の痕を見せてくる。
「痛くない?」
つきあいで聞く。あまり興味はなかった。
「痛いから安心する。血が出ればもっと安心する。生きてる証拠だもん。ねえ、自分が生きてるってどうやって感じられるっていうの?」
僕は死んでない。それが全てだ。死にゆく存在と空間をともにし、そして姉が死にゆくのを見たから、僕じゃない、死んだのは。知ってるから、僕は生きてる。
「まだ自己紹介してなかったね。私、ライカ。よろしく、ヤナギダくん。同じ学校の者同士、仲良くやりましょう」