東京45年【90-4】渋谷告白
1986年 冬
『佐藤先輩、僕は浅井さんが好きですから。。。』
『お前は、バカか!!!私に言うんじゃないよ!!!あー、もう、イライラするわ』と玲。
『済みません。。。。。。
浅井さん、僕は。。。
僕はあなたが好きです。
以前から好きでした。。。
あれっ、ヤバい、うわああ。。。
言っちゃった。。。』
と菅井先輩は横に座った佐和ちゃんの目を見て言った。
『菅井先輩、私も好きです。
入社した時にコピー機の使い方を教えてくれて、
部署の場所とか教えてくれて。。。
それから。。。。。。
好きになりました。
でも気付いて貰えなくて。。。』
『うわあああ、どうしよう。どうすれば良いんだ、島』
『気持ちを受け止めて上げて下さい。それだけです』と俺。
『はい、つ、つ、付き合って下さい』
『はい、喜んで!!!』と佐和ちゃん。
『うん、良かった!!!じゃあ、飲もうか!!!』と玲。
続けて、
『良かった。
でもさ、菅井、あんた簡単に手を出すんじゃないよ。
あんた童貞だっていうからさ、心配でさ』
と玲は少し酔っていた。
『で、佐和ちゃんはバージンだから大切にしなさいよ』
『ごめんな、二人とも、でもこいつの応援の仕方なんだけど、気が早すぎると言うか。。。』
『いいえ、佐藤さん、ありがとうございます。お蔭さまで、やっと菅井先輩の気持ちが聞けて嬉しいです』
『ほうら、司、良かったって言っているわよ。菅井、あとはお前次第だからな!頑張れ!!!』
『はい、頑張ります。でも。。。。何を頑張れば良いのか。。。あー、分からない事だらけだ。。。』
『浅井さん、今週土日空いていたら映画でも行きませんか?』
『佐和子って呼んで下さい。日曜日なら大丈夫です。嬉しいです』
『よし、菅井、よろしい!!!』と玲。
『あのね、菅井、私はね、5年前に司に会って好きになったの。
しょうちゃんとは、もう別れてたけど、それでも、会ったりして、引き摺っていたわ。。。。
で、司にはあんたも知っている茂子ちゃんがいたから諦めたの。。。。
でも、やっぱり諦めきれてなくて。。。。
4ヶ月前に偶然銀座で出会って、私が引っ掛けたの。
そして、司は全部を受け入れてくれたの。
気持ちを言葉と行動にしてくれて、
本当に感謝しているの。
それで今こうなれているの。
だからね、気持ちをちゃんと言葉にして伝えるのよ。
きっと佐和ちゃんは分かってくれるわ』
『そうですか、そんな事があったんですね。
分かりました。
僕もがんばります。
島、お前は山も真剣だけど好きな人にも真剣だな』
『僕の事はどうでも良いですから。。。。。』と俺。
『佐和子さん、あの。。。』
『佐和にして下さい。さんは要らないです。私は何て呼べば良いですか?』
『みきちゃんって呼ばれていますけど。。。』
『じゃあ、私も佐和ちゃんにして下さい』
『じゃあ、その下さいも止めないですか?丁寧語も敬語も止めましょう』
『嬉しい』と佐和ちゃん。
『何の話でしたっけ?ああ、そうだった。
この島はこんな奴で、みんなの事を考えてくれて、
正月の山もこいつが居たから全員無事に下りられたんだ。
山の実力と判断力は凄くて、
絶対に仲間を山で死なせないって信念がある。
それに用意周到で、野生の感も素晴らしい。。。
だから街にいる時もトレーニングして努力する。
最近は毎日50km走っているらしい。
それは何よりも、彼女を悲しませたくないからだって。。。。。
それは、今回、剱で話して分かったんだ。
それに部員の下界での事も心配してくれる。。。。。
ダブルデートもこいつの発案なんだ』
『島谷さんは有名な方ですよね?
新聞に出たり。。。登山の事は何も知らないですけど。。。。。
幹ちゃんに後輩だって聞いて心配しました。
そんな危ない事を幹ちゃんもやっているんだって知って。。。』
『いやあ、佐和ちゃん。
俺は、こいつの足元にも及ばないよ。。。
考え方が違うんだよ。
こいつは、部員の命を救って、部員を厳しく指導して。。。。
こいつの山は、自分の周りの人を悲しませないで、
人生の糧にしようとしようとしているんだ。。。
それに実力は物凄い。
歴代早稲田山岳部の中でピカ一だ。
竹中先輩も凄かったが、
山の捉え方が違っていたんだと思う。
もちろん、実力の差があり過ぎるから、
こいつが全力出した登山を見た事は無いが、
登った山歴を聞いただけで、分かるんだ。。。
今回の劔だって、こいつ一人だったら、
2日で終わってたんじゃないかな?』
『これからも幹ちゃんを宜しくお願いします。。。それに佐藤さんも宜しくお願いします』