東京45年【69-1】早稲田 | 東京45年

東京45年

好きな事、好きな人

東京45年【69-1】早稲田
 

 

 

1985年 冬の頃、25才



俺は次の月曜日から再び早稲田に通う事になった。鉱物学の勉強が開始された。

 

 

俺は大学に入って以来、こんなに真面目に勉強の為に大学に通った事は無かった。

 

 

いつも居る場所は早稲田本校の山岳部の部室だった。

 

 

だが、本来勉強の為に居るべき場所は理工学部大久保校舎だった。

 

 

7年も居たのに俺には物珍しいものが多く、さらにそこに余り馴染みが無かった。
 

 

 

 


始まった鉱物学の勉強はと言えば、小林教授は本を差し出すだけで、何も説明しなかった。

 

 

俺は頭に来ながらも黙って毎日朝から晩まで本を読んでいた。

 

 

日本語の本だけではなく、時には英語やドイツ語、フランス語、スペイン語の本だった事もあった。

 

 

日本語でも訳の分からない専門用語が出てくる専門書を母国語以外で理解しろと言う方が無理だった。

 

 

これには頭に来ながらも、諦めの境地に近づきつつあった。俺は苦痛で頭を痛めながら、諦めながら辞書を引きながら、語学の勉強もしていた。
 

 

それを同じ研究室の研究生に話をすると、“普通は大学4年間で学問の広さと関係性が分かるはずなんですけど。。。”と言われた。

 

 

俺の学問の経験の無さを明らかに露呈した一言だった。
 

 

だが、うっすらと分かってきた事が一つだけあった。

 

 

それは、鉱物学と一口に言ってもその広さだった。
 

 

広義には、動物、植物以外の自然物の事をさし、石油・地下水までも鉱物に含められる場合がある。

 

 

俺が読んでいた殆どの鉱物学の文献では、“天然に産出する無機質で一定の化学組成と結晶構造を有する固体物質”の事を“鉱物”と定義する場合が多かった。

 


だが、そこでまた矛盾する事が出てくる。琥珀は樹液の化石、つまり元は有機質である。

 

 

それも場合によっては鉱物学に入るし、水銀は固くはなにのに、これまた鉱物学に含まれる等々、なんたる事だ。

 


要するに鉱物学とは範囲の定まらない、定義の出来ていない学問だった。
 

 

数学は、大雑把に言うと計算を解く学問で、紀元前3世紀頃の古代バビロニアの時代からある。

 

 

化学や物理もその頃からある。

 

 

しかし、鉱物学は学問として定義されたのは19世紀終わりからだった。

 

 

若い学問だと聞いては居たが、その線引きも出来ていない程だった。

 

 

そして、うっすらと分かったもう一つは、学問とは論理の創造だった。

 

 

新しいものを、不思議さと不可解さと不気味さを保った新しい事柄を何かの為に役立てる事を目的として研究し、解明し、結論を出す事が学問だと知った。

 

 

さらに追い打ちを掛ける様に“学問と勉強は違いますからね“と同じ研究生に言われて、さらに打ちひしがれていた。

 


その頃は家に帰る度に玲に話をした。

 

 

毎日新しく知った多すぎる知識を何処で区切りもせず端から端まで玲に話をした。

 

 

玲は全く知らない事なのに微笑みを保ちながら真剣に聞いてくれた。とんだ迷惑だっただろう。
 

 

話をする方が整理もぜず、しかも訳が分かっていない事ばかりを唐突に話をするのだ。

 

 

聞く方はもっと訳が分からない。いつまで続くのかと飽き飽きするかも知れない。

 

 

それなのに玲は優しく聞いてくれた。

 

 

さらに、学生生活が長いのに、学問の意味を知らなかった俺に玲はこう言ってくれた。
 

 

『秀は、ちゃんと一つの事に向き合っていたのよ。それも学問でしょ?だからこれからも出来るわよ』

 


嬉しい事をズバッと言ってくれる玲がいてくれた。この一言は本当に嬉しかった。

 

時代は2024年に飛ぶが、現在はこれらの相互関係に重点を置いて地球全体をひとつのシステムとしてとらえ総合的に研究しようとする地球システム学、惑星システム学、地球惑星学に纏めようと提唱されている。

 


それは地球科学あるいは地球惑星科学と総称される主な研究分野を挙げる。

 

 

これらは必ずしも独立の用語ではなく、同義あるいは互いを包括する呼び名として用いられることが頻繁にある。

 

自然地理学 (physical geography)

地形学 (geomorphology, topography)

水文学 (hydrology)

気候学 (climatology)

地域地理学 - 地誌学のうち自然について研究するもの

測地学 (geodesy)

土壌学 (pedology, soil science)

地質学 (geology)

地史学 (historical geology)

古生物学 (paleontology)

層序学 (層位学、stratigraphy)

堆積学 (sedimentology)

構造地質学 (structural geology)

岩石学 (petrology)

鉱物学 (mineralogy)

鉱床学 (economic geology, science of mineral deposit)

地球化学 (geochemistry)

地球物理学 (geophysics)

地球電磁気学

地震学 (seismology)

火山学 (volcanology)

海洋学 (oceanography)

海洋物理学 (physical oceanography)

海洋化学 (chemical oceanography)

海洋生物学 (biological oceanography, marine biology)

海洋地質学 (marine geology)

気象学 (meteorology)

大気物理学

大気化学

雪氷学 (glaciology) - 水の固体状態に対する総合総合/学際分野

地球環境科学 - 地理、地形、地質、海洋などなどの総合/学際分野

地球工学

惑星科学
 

 

関連する分野としては、

天文学 (astronomy)

宇宙物理学(天体物理学、astrophysics)

宇宙科学 (space science)

土木工学 (civil engineering)である。
 

鉱物学はこんなに広い分野の中の小さなものであるが、隣接分野が多岐に渡っている。。
 

 

 

 

 

 

さて、1985年に話を戻そう。
 

 

読書の冬が1ヶ月も続いていた。

 

 

何冊読んだだろうか?しかも分厚い本ばかりで辟易としていた。
 

 

そんな中で小林教授が聞いてきたのは、また難しかった。
 

 

『真実と真理の区別は何だね?』

 


またまた、難しい質問だった。
 

 

『答えられません!考えます』
 

 

『そうか。では明日答えてくれ!』
 

 

“またまた、明日かよ”と思ったが、『はい!』ときっぱり答えてしまった。
 

 

その日、俺は夕方まで研究室にいた。

 

 

それから真実と真理と呟きながらフラフラと新大久保を抜けて職安通りから新宿駅に向かった。

 

 

途中、歌舞伎町のコマ劇場の横を過ぎて同伴喫茶王城の前を通り靖国通りへと抜けた。

 

 

そして自然と明治通りを渋谷方面に向かって歩いた。

 

 

歩きながら真実と真理を考えていた。