電車は只今、全速力で次の駅へ急がせていますから……」
言葉の終るか、終らないうちに、電車は悲鳴に似たような非常警笛をならして、目黒駅の構内に突入して行った。電車が停車しない前に、専務車掌の倉内銀次郎はヒラリとプラットホームに飛び降り、駅長室に馳けこむなり、医者と警視庁とに電話をかけた。その間に電車は停り、美少女の倒れた第四輌目の乗客は全部、外に追いだされた。
駆けつけた附近の医者は、電車の床の上に転った美少女に対して、施すべき何の策をももたなかった。というのは、彼女の心臓の上部が、一発の弾丸によって、美事射ちぬかれていたから。弾丸は左背部の肋骨にひっかかっているらしく、裸にしてみた少女の背中には弾丸の射出口が見当らなかった。「銃丸による心臓貫通――無論、即死」と医者は断定した。
惨死体を乗せた電車は、そのまま回避線へひっぱり込まれ、警視庁からは大江山捜査課長一行が到着し、検事局からは雁金検事の顔も見え、係官の揃うのを待ち、電車をそのまま調室にして取調べが始まった。
