▼PCT社のatalurenはEUで条件付認可取得
先の記事でもご紹介したとおり、ataluren(商品名 Translarna)は2014年8月にEUにて5歳以上の歩行可能な、ナンセンス変異を有するDMD患児に対する治療薬として条件付で承認されました。
9月には、atalurenの第3相臨床試験への患者登録が終了したことが報告されています。第3相臨床試験の最初の結果の公表は2015年下半期に予定されています。
この第3相臨床試験は48週間で行われ、EUでの完全承認、そしてアメリカでの承認のため必要な試験となります。
▼Summit社はutrophin modulatorを開発中
2014年10月にイギリスのSummit社は、SMT C1100(経口投与可能なutrophin modulator)が第1b相臨床試験において、安全性が確認され、筋肉にダメージを与える物質の血中濃度の減少が確認されたことを報告しました
SMT C1100は、筋肉蛋白質であるutrophinを増加させることを目的としています。utrophinはジストロフィン蛋白質類似物質で、筋組織において、ジストロフィンの代替として機能することが期待されています。
動物実験では、utrophinを筋組織内で増加させることで、ジストロフィン喪失の部分的な代償が可能であることがわかっています。
Utrophin modulatorの利点は、どのような遺伝子変異の型のDMDに対しても有効性が期待できる点です。
▼ReveraGen社のVBP15は、筋肉再生過程を正常化させる
2014年7月にReveraGen社はDMDに対する実験的治療薬のVBP15を用いた健常者に対する臨床試験を開始予定であることを公表しました。
VBP15はDMD罹患筋組織を、プレドニゾロンに類似したメカニズムにより、体重増加や成長遅延、情動変化などの副作用なく、修復する効果をもたらすことが期待されています
2014年10月13日にJournal of Cell Biologyに公表された研究結果では、マウスの隣接する筋組織を10日間ずらして損傷すると、2つの損傷組織間において組織修復シグナルの混乱が生じ、結果として筋組織の再生は起こらず組織の瘢痕化が生じることをみいだしました。
プレドニゾロンもしくはVBP15を投与することで、この修復シグナルの時間的なずれによる混乱が修正され、筋組織再生過程が正常化するようにみえるとのことです。
DMDでは慢性的な筋組織の損傷が、さまざまな時間経過で起こっており、プレドニゾロンにより修復過程が調整されることで、より正常に近い修復が可能になるのではないかと考えられています。VBP15ではプレドニゾロンによる有害作用が軽減されることが期待されます。
▼Sarepta社のeteplirsenの第3相臨床試験開始
2014年秋に、Sarepta社のeteplirsenの第3相臨床試験が開始となりました。
eteplirsenはエクソン51スキッピング誘導治療薬であり、ジストロフィン遺伝子のエクソン51近傍に変異のあるDMD患児が治療対象となるものです
この薬剤により、本来より短いけれども機能するジストロフィン蛋白質の産生が可能となり、機能的予後が改善することが期待されています
Sarepta社はアメリカ食品医薬品局(FDA)に対してeteplirsenの新薬申請を2014年末までに行う予定でしたが、FDAより2014年10月27日に追加情報提示の指示を受け、新薬申請時期を2015年中ごろに延期しています
Sarepta社はさらに、エクソン53、エクソン45、エクソン50、エクソン44、エクソン52などのエクソンスキッピング誘導治療薬を開発中です。
▼Prosensa社はdrisapersenの承認に向け前進中
2014年10月にProsensa社はFDAに対してdrisapersenの新薬承認を申請開始したことを公表しました。
drisapersenは2013年に第3相臨床試験において、望ましい結果が得られず、開発が一時中止されていました。
しかし、第2相臨床試験の追跡調査において、2014年3月に良好な結果が得られたとの報告があり、さらに臨床試験を継続することとなりました。
Prosensa社も、エクソン51以外のエクソン44、エクソン45、エクソン53、エクソン52、エクソン55のスキッピング誘導治療薬を開発中であり、ヨーロッパではエクソン44スキッピング誘導治療薬のPRO044が第1-2相臨床試験が終了しています。
またヨーロッパではエクソン45スキッピング誘導治療薬のPRO045が第2相臨床試験参加者募集中であり、エクソン53スキッピング誘導治療薬のPRO053 の第1-2相臨床試験が実施中です
翻訳:安田 英彰(医師)
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アメリカ筋ジストロフィー協会の許可をいただいて翻訳・記事を掲載しています。
Used with permission of the Muscular Dystrophy Association of the United States.
Excerpted from an article in MDA's Quest magazine.