
それはまるで…夕暮れに染まる
雲と海の細波の様に。
今世という『今』を生きる者には
少なからず、前世という『過去』
で関わった者達との関係が色濃く
浮き出る事もあるという。
あれから数ヵ月の間に
事態は思わぬ方向に進んでいた。
第2話で登場した…彼女が幼い頃から
知っていた叔父さんの様な工場経営者
の社長が経営難で自ら命を絶った事を
きっかけに、彼女の父の会社の経営
にも少なからず影響が出始めたらしい。
具体的な内容は書くべきではないので
あえてここでの記述は避けるのだが…
彼女が元々していた物件管理という仕事
だけではなく、会社の本業である建築や
施工の方にも参加しなければならないと
いう状況になっていた。
その間にも、会社に関わる人の自宅が
火事で消失し焼け跡から御息子の遺体
が見つかるなど「生死に関わる事件」
は続いていたのだが、彼女自身の会社
での慣れない業種に対する不安や現場
と経営側の軋轢。
様々な人間関係に疲れきっていた時に
追打ちを掛けるかの様に信じられない
出来事が…。
それは…突然の父の死。
確かに大往生ではあったのだが、突然
会社の柱を失った衝撃に右往左往する
暇もなく押し寄せる仕事の波。
今、私が倒れる訳には行かないと…
平静を保つ自身をどれほど冷酷な人間
なのかな?と思う程に気丈に振る舞った。
葬儀の段取りを取り仕切り通夜・告別式
を執り行う間、亡き父を偲ぶ弔問客の列
は途絶える事はなかったという。
様々な「思い」が胸を過りながらも
彼女は父の偉大さを感じずにはいられ
なかった。
偉大な父という後ろ盾を失い、中には
掌を返す様な仕事の取引をする連中も
確かにいたのだが、そんな不義理な事
をする人間の末路を彼女は知っていた
ので取り立てて振り回される事も無く
淡々と仕事をこなした結果、だんだん
と形になり、ここ最近は社員達の成長
が見え始め、以前とは違ういい意味で
忙しくなってきたそうだ。
父が遺したものの大きさを感じながらも
前向きに生きようとする先輩に、少し
言葉は違うかもしれないが「成長した」
と感じずにはいられなかった。
ただ、ステップをあがれば人の評価も
厳しくなり、妬みややっかみの対象に
する人間も増えるのは必然で、彼女に
とっての「心と身体の管理」の“要”で
あるうちでのカウンセリングとリンパ
施術の際、以前より更に「重いモノ」
を感じるのは決して気のせいでなく…。
最近、彼女への施術の後
僕が疲れて動けないのは、彼女の
「重いモノ」を受取る量が確実に増えて
きたせいであって、一酸化炭素中毒でも
ないのに、実際に白目を向いて転げまわ
らねばならないのはどうやら…
二頭身の僕の方だった(笑)
それでも頑張ります。
完




