過去1年間のICU患者からランダムに患者を選定しデータ分析した結果、合計で2,634回の薬剤投与の内316のエラーが発見されたという研究があります*1

薬剤に関連したエラーは臨床において全く少なくなく、むしろ多いです。

そこで患者さんの疾患、症状を治すことができるという重要な薬剤に関するエラーについて述べてみましたので、医療従事者の方々はぜひご参考ください。

 

*1:(Escriva Gracia J,Brage Serrano R,Ferandez Garrido J:Medication errors and drug knowledge gaps amang critical-care nurese:a mixed  multi-method study.BMC Health Serv Res 19(1):640,2019

[引用先:ICNR Vol.7 No.4 「インシデントのなおし方」栗原 知己さん著]

 

研究の中でエラーを減らすことができるのか、という問いに対して、コミュニケーションの重要性について記載されています。"医師と看護師のコミュニケーションによる効果を明らかにした研究においては、「コミュニケーションが薬剤投与に関連したエラーはわずかながら負の相関関係にある」"と示されています。よって明日からでもすぐにできることとして、コミュニケーションを密に取ることが大切であるとされています。

  • 実際の臨床では

5年間、臨床を続けてきてみてエラー発生要因にはもちろん薬剤に対する知識不足や関心がないこともありますが、そもそもコミュニケーションを取れる時間がそもそも無いことや、人員不足、十分な確認ができないほどの多重業務に追われている現状があります。

大学のリスクマネジメントの授業ではヒューマンエラーは必ず起こりうるものだから0にすることではなく、エラーを回避するシステムを構築することが大切だと学びました。看護師が医師から薬剤の指示を受け、(患者の状態、データなどから)アセスメントし、薬剤を作成し、投与へといたりその効果を評価する、という一連の流れにおいて、起こりやすいエラーは薬剤内容、投与量、投与時間、投与速度などがあげられます。

  • では一体どうすれば良いのか。

もちろん上記に記載した研究内容にあるコミュニケーションを行うことがエラーを減らすことができると私も同感します。

しかしそれでは限界があります。それは、そもそも多重業務で、人員が不足している労働環境においてコミュニケーションを取る時間がないことや、エラーが起こりやすい環境にある中で意識の改革、精神論でエラーを減らすということがあまりにも現実的ではないからです。

そこで私は、オーダーされた薬剤がまるで自動販売機のようにロボットが十分な衛生環境のある箱の中で作成し提供してくれるデバイスを作ってはどうかと思います。

患者さんが目の前にいて具合悪そうにしていることを発見し人の手で医療、看護をすることに特化し、一方で薬剤の作成はロボットにシフトすることができれば人員の確保もできますし、もっと看護師が患者さんと話し、リハビリを行い、患者カンファレンスを行い、療養上の世話ができます。

完成し導入に至るまでたくさんのコストが掛かります。そしてそのロボットが作動しなくなった時、停電になった時、何らかの不具合が生じた時など様々なリスクもあります。

しかし、そのロボットが仮にあったとしたら薬剤に関するエラーが大幅に少なくなりもっと患者さんに時間をかけられます。

 

人間が何かを行う以上ヒューマンエラーは免れず、大概はそのエラーを回避すべく様々な対策案、規約、プロトコルを作成しますが結局は効果的に作動しないことも多いです。エラーがあった時は効果的な振り返りもせず、新たな対策案を立てようとし結局その新しい対策案も守られず風化していく姿もみてきました。

時代はIoT(internet of things)、AI、ITへと変革している中で日本の医療業界はまだまだ出遅れているのだと思います。

IoTやAIなどが医療業界にもたらすメリットを研究し、課題を解決できるような人になりたいなと思います。