041 A13 可能性はマーブル | れびりんす

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人生という迷宮と向き合う日々の記録と記憶と何か。



梨紗からのメッセージで、一旦現場に戻ることにした。
水谷親子はジャガーに任せる。

尚都、一度戻ってきて。
私たちの力が必要になるかもしれない。

シンプルなメッセージだ。
私たちの力、と言われればつまり二つの指輪が揃ってこそ発揮される力のことを指すところまでは想像に難くない。
だが俺も梨紗も、この二つの指輪が揃った時に何ができるかはまだ完全に把握していない。

それでもこの力を欲するということは、相応の理由があるのであろう。
二人を預けるために研究所を後にしてからまだ一時間も経っていない。
水谷親子が命を失わずに済んだのは上出来だったが、もちろんそれだけでこの一件が終わりではないということだ。

特別研究室の火事は人為的に起こされたものであろう。
出来すぎている。
そして、その黒幕には堤女史が関係しているはずだ。
そこまでは落ち着いて考えれば比較的容易に誰でもわかる。

梨紗やペアたちは堤女史を無事拘束しているだろうか。
ジャガーから仕入れた松浪未久と未来は亡くなったはずの人間であって、アンノウンこと水谷未知は兄の未来を探して潜入に至った話は役に立つだろうか。
否、そもそもアンノウン本人が現場にいる以上、その程度の情報はすでに共有されていて不思議はない。

梨紗は頭が良い。
付き合い始めてしばらくは気付かなかったが、特に今のこの特殊な環境に身を置き、そして予想だにしなかった共に行動をする状態になり、そういう段階を踏んで進めば進むほど、自分の気持ちとは裏腹に梨紗の存在の大きさが際立つ。
そりゃ当然男なら、恋人は守りたいし、カッコもつけたいわけなのだが、梨紗の頭脳はいつも俺の数歩先を行っている。
だからといって考えることをやめてはいけないのだが、どうも今のところ良いとこナシなのだ。
肝心なところで梨紗がいてくれて良かった、となってしまう。

今回こそは汚名返上、名誉挽回したい。
だから梨紗と合流した時に頼れる自分でありたいから、必死に考えている。
いや、思考が脱線している。
そんなことを考えているうちに、だいぶ研究所員たちがまばらになった駐車場に到着した。