3211回目鉄馬物語
鉄馬物語
小節風に

もはや
誰からも愛される事なく
田舎の暗い倉庫の片隅で
埃まみれになって鉄くずのごとく
放置されていたこの鉄の馬に
「走りたいだろ?さあ、出ておいで」
と
火を入れた。
すると
30年近いブランクを
感じさせない雄叫びをあげ
生き返った。
「走りたかっただろ?これからいっぱい走れるよ」
と語りかけて旅に出た。
馬らしく走ることを諦めていたのか
最初は走ることすらままならなかったけど
徐々に勘を取り戻し
走る事を思い出してくれたようだった。
だが・・・
30年近いブランクは
甘くなかった。
身体のあちこちから血が吹き出し
見る見るうちに弱っていった・・・
やっぱりそうか・・・
なんとなくこうなる事を感じていた。
「おまえを元気にしてくれる名医がいるからそこまで頑張れ!」
と語りかけて
血を吐きながらもなんとか
名医が住む丘まで辿り着いた。
つづく

