前回までのあらすじ~
鍛冶爺の厳しい修行をクリアーするために、地獄の一週間を乗り切った桜色のピーナッツ。
なんとかコンプしたのはいいが、失ったものも大きかった。
持っていたアイテムの半分以上を失ったピーナッツは次回の修業を乗り切ることができるのであろう か?
―夜
私は台所にて食器の後片付けをしている
もちろん一人で
別に手伝ってほしいわけではないけれど…
義父「お疲れ様、栄子さん」
パジャマ姿で首からタオルをかけたお義父さんがやってきた
栄子「お義父さま」
義父「少し喉が渇いてね。すまないがコップをもらえるかね?」
栄子「そうなんですか、よろしければお茶でも入れましょうか?」
義父「いや、今日はもう寝るだけだし水でいいよ」
栄子「そうですか。それじゃあ私用意しますね」
私はコップを取り出すと、棚にしまってあるペットボトルの水をコップに注いだ
冷蔵庫にも冷えた水は入っているが、寝る前のお義父さまにはぬるめの水を…と以前お義母さまから言われたことがある
義父「栄子さんはホント頑張るね」
栄子「いえ、私なんてまだまだです」
私はコップをお義父さんに差し出した
栄子「どうぞ」
義父「ありがとう。最近どうかね?頑張りすぎて疲れてはしないかい?」
正直体調はまだ悪い
相変わらず軽く頭痛はするし、少し寒気もする
栄子「全然大丈夫ですよ。頑丈だけが取り柄ですので」
私は笑いながらそう言うと、誤魔化すように洗い物の続きに取り掛かる
義父「よかったら手伝おうか?」
栄子「いえ、もう後はお皿拭くだけなのですから」
義父「そうかい」
ありがたい申し出だったが私は迷うことなく断った
申し訳ないとゆう気持ちももちろんあったが、依然お義父さんに手伝いをしてもらったところ、その様子をお義母さまに見られこっぴどく叱られた事がある
家事は女の仕事だと…
当然その場にお義父さんもいたので、強引に手伝おうとはしてこない
気持ちだけありがたく頂くとしよう
義父「すまないね、家内が無茶ばかり言って…」
栄子「そんな。無茶なんて言われてないですよ」
義父「無理しなくていいんだよ?」
栄子「…無理なんてしてませんよ」
義父「…」
栄子「…」
空気が重い…
義父「正直なところ、居づらいんじゃないのかね?この家が」
栄子「そんな事ないですよ」
そんな事ないはず…
義父「実は私も、最近家内と二人だと息が詰まってね。今も家内が風呂からあがってきたから逃げてきたんだよ」
栄子「そうなんですか」
義父「世間では熟年離婚とゆうものが流行っているが、家もそう遠くないのかもしれないな」
栄子「何を言ってるんですか。お義父さま達なら大丈夫ですよ」
我ながら無責任な慰めだ…
義父「どうしてこんな事になってしまったんだろうな…」
栄子「…」
どうしてこんな事に…
お義父さんはどれの事を言っているんだろう…
お義母さまの態度の事を言っているのなら答えは分かってる…
お義父さんも原因はわかっているはずだ…
義父「あぁ、すまないな。栄子さんも辛いのは同じなのにこんな事を言ってしまって…」
栄子「いえ、気にしないでください」
義父「まぁなにかあったら遠慮せずに言いなさい。別に肩もみ要因でも構わないから」
お義父さんは私の肩を軽く揉んでくれた
義父「私はこう見えても家内専用のマッサージ器歴が長いからね。腕はそんじょそこらの器械には負けないよ」
栄子「はい。それじゃあ今度お願いしますね」
義父「私はいつでもいいからね。あ、それとそこが済んだらお湯が冷めないうちにお風呂に入るといい。一日の疲れは風呂でしっかりと取らないとね」
栄子「はい、ありがとうございます」
私の肩をポンポンと叩くとお義父さんは去って行った
ちなみに私はマッサージとかされるのはあまり得意ではない
くすがったりなもので…
またもやお気持ちだけ頂くとしよう…
そんな事を考えている内にお皿も全部拭き終った
栄子「さてと、お風呂に入るか」
今日もいろいろあったし、お義父さんの言う通り一日の汗を流しに行くとしよう
本当にいろいろあった…
朝一でお義母さまに叱られ、お漬物はまずいと言われ、天使と名乗る男と出会い、洗濯物が落ち…
栄子「あれ?」
私はふとお昼の事を思い出す
栄子「そういえばあの天使、私を見守るとか言ってたわよね…。まさかお風呂も…?」
いや、お風呂どころじゃない
トイレや着替えなど、誰にも見られたくない所が全部筒抜け…
あまりのショッキングなことに私の時間は止まり、反比例するように急激に鼓動が早くなる
男「その心配はないよ」
栄子「!!?」
男「いや~急な心の乱れがあったから来てみたけど、そっかそっかお風呂の心配だったか。そういえばちゃんと説明してなかったね」
噂をすればなんとやら、自称天使が急に背後に現れた
しかし人間とゆう生き物は、本当に驚いた時は声も出ないらしい…
それはともかく普通に出てくる事を覚えてほしいのだが…
毎度急に出てこられては、こちらの命がいくらあっても足りない
男「確かに見守るとは言ったけど、君のお風呂やトイレまでチェックするわけじゃないから。そんな趣味ないし」
そっか~よかった。安心したわ♪…とは当然ならない。なるわけがない
栄子「…」
男「その眼は信用してないね?僕が天使だって事は信じてくれてるのに」
そっちも半信半疑です…
男「まぁいいや。ちゃんと説明すると、見守るって言っても実際に君の行動を目視しているわけじゃないんだ。そもそも心なんて眼に見えるもんじゃないしね」
もっともだ…
男「わかりやすく言うと、君の心をレーダーみたいなのが感知して電波のように受信できるってゆうのが正確かな。いわゆるビビビッ!ってやつだよ」
わかったような、わからないような…
栄子「それじゃあ、私がどうして不安定になっているのか理由もわからずにあなたは飛んでくるってこと?」
男「さすがにそれはないよ。いちいち僕が来るたびに、どうしたの?何があったの?なんて聞かれても鬱陶しいだろ?」
確かの鬱陶しい…
私の虫の居所次第では叩き返えすところだ
男「君はドライブレコーダーって知ってるかい?」
栄子「タクシーとかによく付いてる、事故が起きた時だけその前後が録画される機械…だっけ?」
男「そうそう。それと似たようなもので、君の心の揺れが大きくなった時だけその前後の君の行動が視ええてくるってわけ。だから四六時中君にかじりついるわけじゃないし、事態を把握できないわけでもない。できゆる限り君のプライバシーを侵すようなことはしないよ」
すでに十分侵されている気もするのだが…
なにせ堂々と不法侵入をされている上に、心の中も覗かれているようなものなのだから…
男「もちろん君の心に関係なく視ることもできるけどね」
栄子「…」
男「いやだな~覗かないって。僕は天使だよ?天使は嘘をつけないの。さっきも言ったけど君の裸になんて興味ないし」
嘘をつけないかどうかはともかく、余計な事を言うようにはできているようだ
男「まぁお風呂やトイレは基本リラックスする場所だろ?心配しなくても普通にしていればセンサーには引っかからないって」
そうゆう問題ではないのだが…
栄子「せめて私の担当を女の天使と交代する事はできないの?」
男「僕たち天使に性別なんてないよ」
どう見てもおじさんにしか見えないのだが…“僕”って言ってるし…
男「ほら、心配しないでゆっくりお風呂に浸かってきなよ。今日はいろいろあって疲れただろう?」
栄子「半分はあなたのせいだけどね…」
男「そしてもう半分があのお義母さんのせいと…」
栄子「…」
図星である…
何も言い返せないのがちょっと悔しい
男「それじゃあ僕は帰るから。おやすみなさーい」
そう言って自称天使は帰って行った
お昼と同様リビングのドアから…
いったい来る時はどこから入ってくるのだろうか?
最近の天使は必要スキルとしてピッキング技術を習得しているのかもしれない…
栄子「………お風呂行こう」
つづく…