都庁前で降りて、公園をつっきって、
5分ほど歩くと、
10階建てのビルに到着する。
そこが、僕が名目上管理している
審査運営の事務局だった。
自治体や官公庁には様々な取り巻きがある。
その第一が天下り先になるような団体だ。
さらにその下で民間企業が、
事務業務を執り行うのが、
1つのビジネスモデルとして成り立つ。
それが一般的にいう事務局だった。
僕の受け持つ
現在の課の前任者の時代に、
このビルの2フロアを借り切って
事業を始めたものだった。
場所は知っていて、
うちの課員が管理業務を行っている。
僕は書面上、
毎月請求上は確認していたが、
こうして来たのは初めてだった。
仕事には向き不向きもあって、
僕は会社でのポジション上、
究極のスターターであって、
とにかく仕事の芽を広げたり獲得するまでが
ミッションであり、性質的にも、
獲るまでに情熱を感じるものの、
運用が開始されると、
あまり興味をもてなかった。
そのせいか、
安定的に運営されている案件については、
取り仕切りは、
子会社の運用チームに任せきりで、
めったなことがないと、出向くこともなかった。
ビルに入ると、4階の事務局に出向く。
50人ほどが、電話をしたり、
パソコンに向って、
入力などの作業を行っていた。
それぞれの顔ぶれなんかを見渡してみたが、
知っている人間は1人として見つからなかった。
「お疲れ様です、柏木さん」
背後から声をかけられた。
この事務局の半数の人員を入れている、
派遣会社の木之本だった。
中背の、四角張った顔した、
まだ若い営業マンだ。
ツーブロックにした髪型が、
流行っぽいが、長く垂らした髪が、
妙に清潔感をそぐ風貌にしていた。
「ここも大分安定してますから、彼女抜いても、
全然大丈夫だと思いますよ」
「そうでしたね、」
僕は答えながら、また、
画面に向う
オペレーターたちを見渡してみる。
心の中で、若菜のどか、
という名をよみがえらせ、
履歴書の写真でみた、
彼女の顔を思い出していた。
どの顔
―みな集中して業務をしている横顔だが―、
を見ても、
一致するものは見出せなかった。
普通、こうしたオペレーション業務をする人たちは、
受動的な姿勢で、
業務を間違いなく実行することを、
第一の条件としている。
そのため、おとなしめな性格な人が多く、
例のサブスク会社に出向いて、
積極的にコミュニケーションをする人材が
いるとは思えなかった。
木之本は、
オペレーターの業務テーブルの間に入っていって、
1人の女性に声をかけていた。
それが多分、若菜のどかなんだろうか、
僕は吸い込まれるようにして注視した。
女は立ち上がって、僕の方をじっと見た。
そして、ぺこりと軽く頭を下げた。
僕はつられるようにして、
視線だけはそのままで軽く会釈を返していた。
5分ほど歩くと、
10階建てのビルに到着する。
そこが、僕が名目上管理している
審査運営の事務局だった。
自治体や官公庁には様々な取り巻きがある。
その第一が天下り先になるような団体だ。
さらにその下で民間企業が、
事務業務を執り行うのが、
1つのビジネスモデルとして成り立つ。
それが一般的にいう事務局だった。
僕の受け持つ
現在の課の前任者の時代に、
このビルの2フロアを借り切って
事業を始めたものだった。
場所は知っていて、
うちの課員が管理業務を行っている。
僕は書面上、
毎月請求上は確認していたが、
こうして来たのは初めてだった。
仕事には向き不向きもあって、
僕は会社でのポジション上、
究極のスターターであって、
とにかく仕事の芽を広げたり獲得するまでが
ミッションであり、性質的にも、
獲るまでに情熱を感じるものの、
運用が開始されると、
あまり興味をもてなかった。
そのせいか、
安定的に運営されている案件については、
取り仕切りは、
子会社の運用チームに任せきりで、
めったなことがないと、出向くこともなかった。
ビルに入ると、4階の事務局に出向く。
50人ほどが、電話をしたり、
パソコンに向って、
入力などの作業を行っていた。
それぞれの顔ぶれなんかを見渡してみたが、
知っている人間は1人として見つからなかった。
「お疲れ様です、柏木さん」
背後から声をかけられた。
この事務局の半数の人員を入れている、
派遣会社の木之本だった。
中背の、四角張った顔した、
まだ若い営業マンだ。
ツーブロックにした髪型が、
流行っぽいが、長く垂らした髪が、
妙に清潔感をそぐ風貌にしていた。
「ここも大分安定してますから、彼女抜いても、
全然大丈夫だと思いますよ」
「そうでしたね、」
僕は答えながら、また、
画面に向う
オペレーターたちを見渡してみる。
心の中で、若菜のどか、
という名をよみがえらせ、
履歴書の写真でみた、
彼女の顔を思い出していた。
どの顔
―みな集中して業務をしている横顔だが―、
を見ても、
一致するものは見出せなかった。
普通、こうしたオペレーション業務をする人たちは、
受動的な姿勢で、
業務を間違いなく実行することを、
第一の条件としている。
そのため、おとなしめな性格な人が多く、
例のサブスク会社に出向いて、
積極的にコミュニケーションをする人材が
いるとは思えなかった。
木之本は、
オペレーターの業務テーブルの間に入っていって、
1人の女性に声をかけていた。
それが多分、若菜のどかなんだろうか、
僕は吸い込まれるようにして注視した。
女は立ち上がって、僕の方をじっと見た。
そして、ぺこりと軽く頭を下げた。
僕はつられるようにして、
視線だけはそのままで軽く会釈を返していた。
プロジェクト686日目。
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