会社の定時は9時、しかし僕は
だいたい8時前には出社している。
上司がすでに来ているのもあるが、
課員が集まってからでは、
僕の業務は会話が中心となり、
中々整理できないことも多くて、
文書作成なんかを片付けたいためだ。
今日も朝早くに出社したのだが、
早速、山寺にいる時にも電話してきた上司の桐村から、
名古屋でのサブスク会社への
体制について確認があった。
名古屋で常駐するのは、
1人か2人でよかった。
こちらからの遠隔指示で、
調査内容を積み重ねてくれれば、
そこから判断して、
なんらかの打ち手というか、
改善や効果的な提案に
持っていけると僕は考えていたから。
提案という料理に落とし込むのは、
その次の話で、
外注でドキュメントに強いコンサルでも
使えばいいと思っていた。
まあ、出張するのは、
誰でもいいというわけじゃないが、
僕は桐村に、まだ決めかねているが、
あてはあると答えた。
定時を過ぎた。そのタイミングで、
どこでこの話を聞きつけたのか、
派遣社員を雇っている
ワンフェイス社の木之本から電話がある。
「柏木さん、名古屋の件ですが、
うちの社員でいい人材がいるんです、」
彼はいつになくはきはきした感じだった。
僕は、
「なんか早いですね情報、」
「営業さんからレポート流れてましたよ」
「いやでも、俺の方でまだ募集するとか、
そういうことは」
「だけどですね、どうせ困ってますよね、
柏木さん行くわけじゃなさそうですし、」
まあ、その通りだった。
彼はぐんぐん話を続けて、
「以前、うちから入れてくれた若菜っていますよね」
「ああ…、」
全然憶えていなかった。
「ほら、都庁前の事務局に入れてもらってる、
女性なんですが、」
都庁前の事務局は、
主に官公庁系の事務を司るために設営した事務所で、
僕の担当のひとつだった。
20人くらいのスタッフで運営しているのだが、
そこにはあまり足を運んでいなかった。
「俺が面談したんでしたっけ?」
僕はどうにも思い出せず、そう聞いた。
「いえ、そっかそっかあ、
前任の方がしたんで、
柏木さんにお会いしたことないですね、すみません」
「いい方なんですか?」
「はいもう、遠隔でもいろいろ指示出せると思います」
本当にいい人材なら、
この話はスムーズに動かせそうな気がする。
僕は袖机をあけて、現在の課の人員リストをくくった。
履歴書を見つける。若菜のどか、とある。
かわいい名前だなと思った。
まだ20代の後半だった。
顔写真はリクルートスーツみたいな上半身、
表情はきりっとして―証明写真は誰でもそうだが―、
清冽な印象を持った。
その顔を見ても、
僕はこの時点では、なにも思い浮かばなかった。
だいたい8時前には出社している。
上司がすでに来ているのもあるが、
課員が集まってからでは、
僕の業務は会話が中心となり、
中々整理できないことも多くて、
文書作成なんかを片付けたいためだ。
今日も朝早くに出社したのだが、
早速、山寺にいる時にも電話してきた上司の桐村から、
名古屋でのサブスク会社への
体制について確認があった。
名古屋で常駐するのは、
1人か2人でよかった。
こちらからの遠隔指示で、
調査内容を積み重ねてくれれば、
そこから判断して、
なんらかの打ち手というか、
改善や効果的な提案に
持っていけると僕は考えていたから。
提案という料理に落とし込むのは、
その次の話で、
外注でドキュメントに強いコンサルでも
使えばいいと思っていた。
まあ、出張するのは、
誰でもいいというわけじゃないが、
僕は桐村に、まだ決めかねているが、
あてはあると答えた。
定時を過ぎた。そのタイミングで、
どこでこの話を聞きつけたのか、
派遣社員を雇っている
ワンフェイス社の木之本から電話がある。
「柏木さん、名古屋の件ですが、
うちの社員でいい人材がいるんです、」
彼はいつになくはきはきした感じだった。
僕は、
「なんか早いですね情報、」
「営業さんからレポート流れてましたよ」
「いやでも、俺の方でまだ募集するとか、
そういうことは」
「だけどですね、どうせ困ってますよね、
柏木さん行くわけじゃなさそうですし、」
まあ、その通りだった。
彼はぐんぐん話を続けて、
「以前、うちから入れてくれた若菜っていますよね」
「ああ…、」
全然憶えていなかった。
「ほら、都庁前の事務局に入れてもらってる、
女性なんですが、」
都庁前の事務局は、
主に官公庁系の事務を司るために設営した事務所で、
僕の担当のひとつだった。
20人くらいのスタッフで運営しているのだが、
そこにはあまり足を運んでいなかった。
「俺が面談したんでしたっけ?」
僕はどうにも思い出せず、そう聞いた。
「いえ、そっかそっかあ、
前任の方がしたんで、
柏木さんにお会いしたことないですね、すみません」
「いい方なんですか?」
「はいもう、遠隔でもいろいろ指示出せると思います」
本当にいい人材なら、
この話はスムーズに動かせそうな気がする。
僕は袖机をあけて、現在の課の人員リストをくくった。
履歴書を見つける。若菜のどか、とある。
かわいい名前だなと思った。
まだ20代の後半だった。
顔写真はリクルートスーツみたいな上半身、
表情はきりっとして―証明写真は誰でもそうだが―、
清冽な印象を持った。
その顔を見ても、
僕はこの時点では、なにも思い浮かばなかった。
プロジェクト685日目。
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