「どうして、
この時期に出張なんてあるの?」
家でのことだ。
僕が例のサブスク企業に
プレゼンのために名古屋に行くことを告げると、
彩花は否定的に言い寄ってきた。
朝食を済ませ、
僕はもう出勤の準備をしていた。
ネクタイを締めながら、
「いやあ、急に決まったから」
「昨日教えてくれなかった」
僕は鏡越しの腕を組んだ彩花を見ながら、
「どうせ日帰りだからさ、」
「でもお、新幹線乗ってくんでしょ、
クラスターになるよ、」
僕はふふっと笑って、
「くらすた?なにそれ」
彩花は少し頬を膨らませて、
「知らないの?クラスターでしょ、
感染広めちゃう人でしょ」
「俺が?」
僕は鏡から目を離し、
振り向くと彼女と直接向かい合った。
「そうじゃないけど…、でも、
いっぱいニュースでやってるし、見てないの?」
ここ数日、忙しかったのもあって、
僕はスマホでもテレビでも、
ほとんどニュースを見ていなかった。
「くらすたって病気?」
「違うよ、もう…」
彩花は深い息を吐くと、
「コロナだよ、すっごい流行ってるんだよ、
死んでる人もいっぱいいて」
僕は笑った。
笑ったつもりだったけれど、なぜか力ない吐息のようになった。
「っふ、それ、なんだっけ?新型インフル」
彼女は頷いて、
「うん、新型コロナだよ、肺炎にすぐなっちゃうって」
「…」
「翔太、肺弱いでしょ、」
「俺?」
僕は1、2歳の頃、肺炎で死にかけたことがあると、
母に聞いたことがあって、
彩花はそのことを言っていた。
「弱くないんじゃない」
「そんなことないよ、持病あったりすると、
すぐ死んじゃうって言うから」
「ふうん…」
僕は、ようやくのことで、少し、
この得体のしれない
新型コロナというやつを意識し始めたかもしれない。
しかしそれは、
まさに新型のちょっとたちの悪い
インフルエンザのように考えていたに過ぎない。
そもそも予防注射もせず、マスクもしない僕は、
毎年流行するインフルエンザに罹ったことすらないのだから。

少し不満そうな顔している彩花をあとに、
僕は家を出た。
朝の9時前、
これから新幹線に乗って、名古屋に向かうことになる。
 

プロジェクト666日目。

 

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2020/5/5 666日目

■kindle 本日0冊 累計75冊 達成率0.71% 

■文学賞公募作品の執筆状況 1作目半分くらい ※まだ賞は未定

■kindleアップのため『桜の闇』を推敲中

 158ページ中50ページくらい了

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