名もなき自由人は、
私の人生の目標であり、先生であり、友人だ。
はじめて彼と出会ったのは19の時。
ちょうど私が3度目に生まれ変わった時だ。
彼の存在やコトバにはいつも救われる。
当時、私はコトバと光と身体の自由を失っていて、
この先の人生がほんとに見えなくて、
心細くて、
不安で、
精神分裂が激しい時期だった。
そんな時、彼に出会えたことはほんとにラッキーだったと思う。
彼は、名前を持たず、過去を持たず、定住せず、
とても不思議な存在で、
同じ人間とは思えないくらい、衝撃を受けた。
名もなき自由人のことを、私は「先生」と呼ぶ。
彼は、いつ、どこで生まれたかも分からない。
いくつもの過去を持って生きている。
世界各地を渡り歩いていて、時々日本にきて私達に文化を教えてくれる。
はじめて、私の存在を普通の次元で捉えてくれた彼は、
存在そのものが、私の救いとなった。
『先生、私は変わりたい。』
『それで、ええねん。その気持ちと、そのままの生き方でええねん。』
『先生、私は自分の生き方がわからない。』
『そんなん、オレもわからんよ。分かったら教えてや。』
『先生、私は、男なのか、女なのか、どうしたらいいんだろ。』
『いま決めんとけ。そんなん、誰にも分からん。踏ん切りついたら、自分で決めたらええねん。』
『先生、私は音楽が好きです。そして、コトバも、写真も。』
『そうか。ええ生き方やな。』
彼と過ごした、約4年の時間は、私の人生の原点となった。
4月、
彼と出会ったこの季節は、いつも不安定になる。
でも、コトバの一つ一つを思い出して、
また次のイメージが浮かび上がる。
そして、毎年感謝する。
『先生、ありがとう。私は表現者として生きてます。』
