👨🦯 お兄さん 代わってください 👨🦯 ~介助の介助~
乗り込んだバスは満員で、
少し空いていた、座席の背もたれのわきに立ちました。
バス停で、その座席に座っていたおじさんが、
誰か手を貸してください、と声を上げました。
半身が不自由なようで、バスの狭い座席に座ったものの、
立ち上がれなくなってしまったようなのです。
座席の横には、高校生らしき背の高い男の子が立っていますが、
顔を正面、窓の方に向けたまま、耳にはイヤホンがあります。
次に近いところに居るのが、私です。
どのようにしたらいいですか? と声をかけ、
教えられた通りに、おじさんの腕の下に私の腕を入れて、
イチ、ニ、のサン、で立ち上がろうとしましたが、私の力が足りません。
おじさんは、かなりの大柄なのです。
無理と思った私は、正面を向いたままの男の子の肩を叩き、
お兄さん、代わってください、とお願いしました。
アッ、というように気が付いて代わったお兄さんは、
スッと、おじさんを立ち上がらせることができたのでした。
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お兄さん、目の前のおじさんに気が付いてよ、と思うと同時に、
小さな自分には、大柄なおじさんを助けるのは無理だ、と、
最初からお兄さんに声をかければよかった、と思ったのでした。
私の助けでは、さらに助けが必要になり、
おじさんにも、余計な負担をかけてしまいました。
自分を客観的に見ること、全体が見えること、
その大切さを、
維摩会 春秋館ではいつも教えていただいていますが、
イヤホンをしたり、スマホに見入ってしまったりしていては、
さらに、目の前のことも気が付かない、見えない聞こえない、のです。
普通に道を歩いていても危ないことがあるに違いありません。
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運転手さんのところで運賃を払いながら、おじさんは、
遅くなってすみません、と謝っていました。
運転手さんは、お気をつけて降りてください、
と声をかけていました。
無事にバスを降りることができて、ひとまず、安心でした。
そして、
いったんバスの座席に座ってしまうと、立ち上がることは大変なのだ、
ということも学んだのでした。