一緒に住んでいなくてもできる親孝行は? ~核家族時代の孝~
核家族化が進んで、
今では、結婚をすると、
新たに新居を構えることが普通になっています。
自分の実家に里帰りするのは、楽しいひと時ですが、
配偶者の実家に行く時には、気を遣うものです。
昔話には、会ってからすぐに結婚して、
そのまま奥さまのところにいる男の人の話が、時々出てきます。
『古事記』 の山幸彦もその一人です。
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天孫ニニギノミコトの御子、山幸彦は、
お兄さんの海幸彦の釣り針を海に失くしてしまった時、
シオツチの神の助けで、海の神の宮殿までたどり着きました。
そして、
水を汲みに表に出てきた侍女の器の中に、宝玉をいれたのです。
侍女は、宝玉の入ったままの水の器を、海の神の娘トヨタマビメに差し出しました。
もしや、誰かが外に居りはすまいか。
そう尋ねたトヨタマビメに、侍女は事の次第を伝えます。
どなた様か、家の前のカツラの木の上に座っておられます。
大変に麗しい男の方で、わが君に増してご立派なご様子です。
その方が水をお求めになられましたので、差し上げましたところ、
この宝玉を吐き入れられました。
宝玉を取ることができずに、そのまま差し上げました次第です。
トヨタマビメは不思議なこともあるものだと思い、外に出てみました。
そして、その人を見るなり、なんと立派なお方か、と心を動かされ、
父親に「わが家の門に、気高く立派な方がおられます」とご報告なさいました。
それを聞いて、
海の神みずからが宮殿の外に出てごらんになられると、
「この方は、天津神の御子であらせられる」とおっしゃられて、
宮殿の中に、お招きになりました。
珍しい敷物を幾重にも重ね、そのうえに御子の座を設けました。
そして、たくさんの結納の品をそろえ、御馳走を準備し、
娘のトヨタマビメを嫁がせたのでした。
山幸彦は、そのまま三年間、
海神(ワタツミ)の国にトヨタマビメと過ごされます。
(参照:『新潮日本古典集成 古事記』 「海宮訪問」)
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核家族化が進んでも、それぞれの実家には両親がいます。
機会あるごとに顔を出すことも、大切な親孝行です。
そして、両親が年を重ねていくにつれ、面倒をみるようになっていきます。
維摩会 春秋館で学んでいる『論語』には、
家庭での一番の徳目は親孝行の「孝」であるとされています。
一緒に住んでいないからこその、親孝行のあり方があるにちがいありません。