ゲールさんに確かめたいことがあるんだ。
荒廃都市ダメルに向かう。
ゲールさんは私の姿を見ると軽やかに笑う。
「ほら、やっぱり僕が言った通り、冒険家殿は僕のもとに戻ってくるんじゃないですか」
おしゃべりを楽しむつもりも今はないので(なんたってカルス達がレッドアイと対峙しているかもしれないのだ!)いきなり本題を切り出す。
蜘蛛、といきなり言われて面食らったのか一瞬ゲールさんの目が揺れる。
その様子を私はじっと見つめる。
赤山の頂上にいたという蜘蛛の話を私はゲールさんにしたことがある。
その後現地に向かったら当の蜘蛛は誰かに連れ去られたあとだった。
さらにその後突如ゲールさんは旧友と再会した一緒に暮らすことになったと嬉しそうに語っていた。
・・・偶然かもしれないけどもタイミングがよすぎる。
実際、その辺からゲールさんと私の間にあったナニカがしっくりこなくなったような気もする。
以前もそれはエルフ将軍の嘘だ、と言ってたね。実はその時のやりとりも引っかかってたのよ。
それまでのゲールさんは割りと裏をとってから事の真偽を篩いにかけて発言していたと思う。
だから他から得られたどんな情報も考察してくれたのにあの時だけは妙にばっさりと「ありえない。その話は嘘だ」で終わらせたんじゃなかったっけ。
そんな混乱を与えるのが目的だとしてもそれがエルフ将軍に何の得になる?将軍の立ち位置ではそんなことをしたらレッドアイとの関係が険悪になるだけで不利な状況に追い込まれるだけだというのに。
そしてレッドアイの代表であるあのアイノ・ガスピル君が「エルフ将軍を信じる」と言っていた。
RED STONEにまつわる噂はそれこそたくさん聞いてきたよ。
でも完全体を手に入れた者達がいてそれをあるビショップに盗まれたという事実があるのにその話だけは誰も知らないんだ。それはなぜ?
・・・もっと自分の目で見て耳で聞いて頭で考えていかなきゃダメなんだ。
まるで先生のように私に語るゲールさん。皮肉気に聞こえるのは私の気のせいじゃないだろう。
痴話喧嘩みたく聞こえるのはなぜ。
誰も信じない→ゲールさんも含まれる、ではないんだよ。
カルス達と一緒にいるようになって共に目的を叶えるために行動するというのはこういうことか、と思ったよ。
皆が動くんだ。
ゲールさんの言う「僕達は仲間」とか「同じ運命」とか、聞いてて心地いい言葉だったよ。
その嬉しい気持ちを返すためにずっと一緒にやってきたんだなと今ではわかる。
私を責めているの?
でもゲールさん。私はようやく気が付いたんだけど私達って対等な立場ではなかったよね。
船頭多くして 船 山登る・・・。
指図する人が多過ぎるとかえって統率がとれず意に反した方向に物事が進んで行くことだ。
「困難なことでも皆で力を合わせればできる」というわけではない。
私とゲールさんの方向性の違いはこれで決定的になった。