名人に香を引いた男。
将棋好きの僕は、この言葉だけでしびれてしまう。
名人に、香(やり)=香車(将棋の駒)を引いて勝ってしまうなどということは、
本来ありえないことで、
将棋で世界一の人物=名人に、ハンデを付けて勝つということを意味する。
そう、もう一度言いましょう。
名人に香を引いた男。
その人物は、升田幸三名人。
もう故人であるが、将棋界に残る、超一流の大名人である。
升田名人が少年の頃、
『お母ちゃん!俺、名人になる!俺、名人に香を引いて勝つ!』
と言い、十数歳で親里を離れ、大阪の師匠の下に、弟子入りしたという。
その想いは、数十年の時を経て、具現化した。
そう、升田9段は、時の名人に香を引いて勝ったのである。
前にも言いましたが、僕は大学院時代、真剣師(賭け将棋師)の大田学先生に、
習っていたのですが、この升田名人と大田学先生(アマチュアで一番強い人)
もお会いしたことがあったそうな。
升田名人は大田学先生の将棋を見て、「大田さんは将棋に明るい」
と一言つげ、大田先生は「嬉しかった」と表現している。
プロの升田名人、真剣師の大田先生。
僕は、大田先生にしか会ったことがなかったが、
これだけ偉大な方と一瞬でも同じ時間と空間を共有できたことは、
本当の財産だと思っている。
いやいや、 名人に香を引く。
格好よくもあり、覚悟のようでもある。
夢は大きくあれよ。と升田名人が言っているような気もする。
将棋をやってて、よかった。。
これだけは、心から震えるほどにそう思う。
