※本館では、ひとつ前のCall your name の記事にたたんでいたものです。
蓮視点で終わりのつもりだったのですが、記憶取り戻してまたくっついてのその後をギャグチックに書いてしまいました。
キョーコ視点です。
ここまでのシリアスムードを壊したくない方は読まない方がいいかも!
かっこよくない蓮でも良い方はどうぞ~\(^o^)
彼の記憶が戻った。
一人で生きて行こうと決意をした早々に、私を追いかけてきた彼。逃げようとしたのに、彼の長い手足に巻き取られ、捕まってしまった。そうなったらもう、彼の匂いに、その力強い腕の感触に、私は抗うことができなかった。
彼は何度も何度も、「ごめん」と言った。初めて見た彼の涙。いつのまにか私は、彼の頭をあやすように撫でていた。触り心地の良い髪質は変わらなくて、ふと漏れてしまった笑み。綺麗な顔を涙でぐちゃぐちゃにした彼が、子供のような瞳で私を見上げた。あまりに頼りないその表情に、私の心はくすぐられてしまい……私は彼、蓮の唇に、そうっとキスをした。
蓮は、記憶を無くす前よりも駄々っ子になった。
以前から、子供っぽい所のある人だとは思っていた。付き合ってからはそれが特に顕著で、些細なことでヤキモチは焼くし、甘やかしだと思ってたけど甘えただし、かと思えば構わないとすぐに拗ねる。そんな所もかわいいな、なんて思っていたけれど……。
「キョーコが行かないならアメリカなんて行かない!」
「も~~~~!アメリカに帰ることはあなたの夢だったんでしょう!?それに渡米宣言したばかりじゃないですか!自分で言ったことは守ってください!!」
私の腰の辺りに巻き付いて、嫌々と首を振っている三十路手前の男(抱かれたい男殿堂入り住み)を、今は引き剥がすのに必死だった。
ああ社さん、生ぬるい目で見るのはやめてください……!
「嫌だ、キョーコといる!でもアメリカにも行く!」
「無理ですってば」
「キョーコも渡米宣言しよう!」
「もっと無理ですっ!」
カイン丸を何匹連れてこられても、無理なものは無理なわけで。
私は迫りくる蓮の顔を手のひらで押さえ込んだ。
「別に今生の別れじゃないんですから!ねっ、社さん!」
「そうそう、年に一度くらいは日本に戻ってこれるさ~」
「そんなんじゃキョーコが足りません!キョーコ不足で死んでしまいます!」
「新しい言葉を作らないでくださいよ!なんですか『キョーコ不足』って!社さんも煽らないでください~~!」
巻き付きの激しくなった蓮に、床に引きずり倒された。そのまま蓮はぐりぐりと顔を髪に押し付けてくる。おかげで髪がぐしゃぐしゃになっていく。
どこか楽しそうに私達を見守っていた社さんを見上げると、社さんはちょいと肩を竦めてから、私達のそばにやってきて膝をついた。
「おい蓮、ひと頻り騒げば収まると思ったから好き勝手させてたけど、渡米は明後日なんだよ。いい加減に……しような?」
蓮に向けて、凍てつくブリザードが吹き荒れる。ぴきんと固まったその隙に、私は二本の檻(腕)から脱け出した。
「会える距離にいるのに会わないで、それでもずっとお前を想い続けてたキョーコちゃんに比べれば、『距離』っていう言い訳のきくお前はまだマシだ。腹決めて行くぞ」
「それはっ……」
実は、思い出さない蓮に、静かにお怒りだったらしい社さん。時折、蓮の傷を抉りにかかる。
蓮は悔しそうな顔をして唇を噛み、言葉を飲み込んだ。
元より記憶を無くしたこと、蓮が悪いとは思ってない。あんまり蓮が悲愴な顔をするから、私はつい、社長さんからくれぐれも秘密にしろと言われていたことをぽろりとこぼしてしまった。
「たまに、私がそちらに伺いますよ。社長さんがプライベートジェットを貸してくれるって言ってくれましたから」
私だって、蓮と一緒にいたくないわけじゃない。でもアメリカは蓮の夢だったから、引き留めるわけにもいかず……本音を隠して蓮の重い腰を上げさせようと奮闘していたところ、社長が提案してくれたのだ。
日本でこれだけ好き勝手できるのなんて社長くらいだろうなぁ……。
なんて考えてたら、蓮がブリザードから復活していた。
「本当に!?社長もたまには気が利くね!」
がばっと再び抱きついてくる蓮に、今度は押し倒される。
「キョーコ、それなら週末は必ず空けてよ。アメリカでデートしよう」
「……まさか毎週来いと?」
「それでも足りないくらいだよ!」
「飛行機一台飛ばすのにいくらかかると思ってんですか!それに私だって仕事あるんですから、どれだけ頑張っても2……いえ3ヶ月に一度行けるかどうかですよ!」
「ええ!?そんな、俺干からびちゃうよ!」
ブーブーと不満を垂れ流し、長い手足を惜しげもなく使って絡み付いてくる。恋人のおねだりと言うよりこれは、大きな子供ができた気分だ……。
駄々をこねたいのは私の方だと言うのに。
アメリカに行って、忙しさに私のことなんて忘れてしまうんじゃないの?
人の想いは、変わる。
存在が根こそぎ無くなるのもつらいけれど、気持ちが離れてしまうことの方が今の私には怖かった。
そんな私の不安をどう思っているのか……。
少しばかり憎たらしくなって蓮の額を小突くと、情けない顔で見つめてきた。思わず吹き出して、しょうがない人だなぁと思う。
また勿忘草を、送ってあげようか。毎日毎日、しつこいくらいに。
海の向こうで届いた花を見て、申し訳なく思うように。
許すも何も、まず恨んではいないけど、これぐらいの仕返しは許されると思う。
部屋中に飾らせて、見るたび見るたび、私のことを思い出すように。
私を忘れないでよ、と。
少し、性格が悪くなったかしら。
元凶とも言える男にデコピンをして、きょとんとする顔にまた、笑った。
end.
進まぬ2013年キョコ誕話の合間に浮かんだ小ネタでしたが、ぱちぱちと後押しをもらって続き、完結にいたりました。
その節はありがとうございました!
12月31日現在、いまだ書けていないキョコ誕祝いに代わりまして、こちらのお話を皆様へ!(←今更
一応こちらフリー扱いにしておきます。
アメブロでは、これにて2013年蓮キョ納めとさせていただきます~