「ACRI」(1996)

人魚の真相に迫るファンタジーを観ました。初見。

監督は石井竜也。予告編はコチラ。

1888年の香港で英国の博物学者グスタフ・オージュボンが人魚を目撃しているモノクロのシーンで映画は始まります。そして、現在のオーストラリアの大学で教鞭をとっている生物学者佐古田教授(藤竜也)。人魚が進化して人間になったのではという”ホモ・アクアレリウス”学説を唱えて、日本の学界を追放された人物です。妻を亡くしていて、カワイイ娘と二人暮らし。そこに海原密(浅野忠信)という若者がやって来て、今は封印している学説についてしつこく聞いてきたんで、冷やかしだと思ってガン無視する佐古田。さらに、密の過去を追っている「ネイチャーワールド」誌の元記者・羽岡(江口洋介)が登場。密にはかつての恋人の亜久里(吉野公佳)を海難事故で失って、自分だけが10日間漂流して助かる奇跡的な体験がありました。その時の記憶を全て失っている密は、人魚のおかげで助かったのかもと思って佐古田に解明してもらいたかったようです。やがて、友人と海に出た密がまた海難事故に遭って1ヶ月漂流する事故が発生。

地元漁師の網で生きたまま引き揚げられた密がいる病院に行くと、彼の手には水かきが生えていて、首筋にはエラ呼吸の穴ができていたのでビックリ。密の出生地が香港で、オージュボン博士が会った人魚との血縁関係がある痕跡も発見。さらに人魚に会ったことがあるという長老タオの証言を得た佐古田は、ホモ・アクアレリウスの存在を確信。密の記憶を催眠療法で回想させてみると、かつての海難事故でホモ・アクアレリウスと交わりを持っていたことが判明。人魚が実在するとなったら、その存在を利用しようとする輩も出てくるわけで、地元市長選に出馬を表明している佐古田教授の知人ノリスが近づいてきて、売名行為のために密の生け捕り作戦を開始。しかし、密をなんとしても守りたい佐古田と羽岡の活躍によって作戦は失敗に終わります。自分がホモ・アクアレリウスを継承する存在だと悟った密は、いるべき場所である海へと帰っていった・・・というのが大まかなあらすじ。

劇場公開は1996年8月24日。岩井俊二の「ウォーレスの人魚」が原作。興行的に失敗して、監督の石井竜也が15億円の負債を抱えたというエピソードを知っているだけでした。デビュー作のカッパに続いて、次回作のテーマにしたのは人魚。ヌメヌメ系の生物に執着があるんでしょうか。ファンタジーの着眼点としてはとても素晴らしいと思います。過去の遭遇体験に囚われた主人公が時を隔てて異生物と再会するプロットは前作「河童」と同じ。ただ、水回りの撮影はハリウッドでも難しいといわれているそうで、それを私財を投じて当時の邦画の体力で実現しようと果敢にチャレンジ。CGや着ぐるみを駆使してビジュアル化した人魚は決してチャチではなく、ガンバって作り込んでいるのは十分に伝わるし、クリーチャー像には前作と共通したイメージがあり、石井竜也の作家性を感じます。

ただ、この世界には人魚がいたのかもという幻想的な気分に浸りたいのに、物語設定や人物造形が薄っぺらく、映画内リアリティを醸成できてないため、本作も残念な出来になってました。そのせいで、オーストリアの晴れやかな大自然のキレイな映像も安い絵空事の装置にしか見えません。人魚が去っていくと「人間には見てはならないモノがある」と教訓めいたことを言って、歴史上の大発見をそのまま放り投げてしまうエンディングもザツ。渋い藤竜也とロン毛の江口洋介はともかく、藤竜也の娘役(沖嶌美樹)や浅野忠信の知人役(山下徹大)の棒読み、オーストラリア現地の外国人役者たちの木偶の坊感もイライラ要素。これまたロン毛の浅野忠信は水中でイルカや人魚と戯れたり、襲われたりして奮闘。彼が人魚と重ね合わせる恋人役の吉野公佳も瑞々しいヌードを披露して気を吐いています。まあ、20年早く作られた和製「シェイプ・オブ・ウォーター」(似ているビジュアルもある)として、観るべきところは多い映画でございました。

『「河童」』「河童」(1994) 少年時代にカッパと出会ったおっさんの話を観ました。初見。監督は石井竜也。予告編がないので、映画主題歌のPVをコチラでどうぞ。世界を…

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Acri (1996) movie with eng subsDirected by Tatsuya IshiiBased on a story by Shunji Iwai

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