「潮騒」(1974)

イヴ・モンタン、キャサリン・ロス共演の奇妙な恋愛映画を観ました。初見。

監督・脚本はフィリップ・ラブロ。予告編は見つからず。

犯罪学者ローラン・ベルマン(イヴ・モンタン)は、出版されて注目を浴びた暴力に関する評論の続編執筆に悪戦苦闘中。静かな環境を求めてフランスの海沿いの町で住む場所を探していて、現在はホテルに滞在しているダンディーな紳士です。不動産を物色中、近所の少年にゴムパチンコで鏡を割られたり、ホテル前の海岸で4人のチンピラが通り過ぎる人を恐喝しているのを見かけたり、何気ない日常の中で思わぬ暴力が潜んでいることに対して敏感に反応する性質の持ち主。ローラン自身もレストランのトイレで空手使いの男に襲われる事件に遭遇します。負傷した左手を治療してもらったホテルの主治医プジェ(リカルド・クッチョーラ)が急病になって、2度目の治療で代理で来た医者が思わぬ美女だったのでビックリ。若くて美しいコンスタンス(キャサリン・ロス)のノーブラブラウス姿に魅了されます。そういえば、この町の来る列車の乗客に偶然彼女がいたことを思い出すローラン。コンスタンスもまんざらでもないようで、急速に仲良くなっていく二人。

夜の海辺を語らいながら歩いた後、ホテルの自室で初めて重なり合います。もらった写真をでっかく引き伸ばしたポスターを自室に貼って悦に入るローラン。コンスタンスが所有しているヨットで全裸になって海の中で愛し合ったりもします。すると、忘れた頃に空手使いの男が再登場。一般人にいきなり空手の技をお見舞いして満足感を得るタイプの変質者のようで、今度は双子のおばちゃん店員がいるベーカリーで暴れ出します。で、ブチ切れた店主に猟銃であっさり射殺されます。またまたローランに話を戻すと、続編執筆に本格的に乗り出したご様子。かつて無実の罪で投獄されていた刑務所を訪問して、執筆する上での刺激を求めたのか、かつて自分がいた独房にいる囚人の脱獄を援助。そんな出来事とは関係なく、不幸が突然訪れます。待ち合わせ場所に指定した海辺で4人のチンピラに絡まれたコンスタンスを助けようとして、格闘の末、頭を打ったローランは即死。失意のコンスタンスは悲しみに暮れて、二人の想い出でもあるヨットを燃やす・・・というのが大まかなあらすじ

原題は「Le Hasard Et La Violence」。"偶然と暴力"という意味。主人公のローランが執筆した著作物の名前でもあり、偶然が引き起こす暴力という本作の主題にもなっています。邦題とポスターからは素敵な恋愛モノに見せかけて客を呼ぼうという意思が感じられます。実際には、偶然に出会った二人がラブラブになる展開と、その周辺で起きる暴力が最後に繋がってしまう不思議な筋立て。ちょとした"たまたま"で幸せなことも不幸なことも起きうるというお話です。渋いイヴ・モンタンの安定感はさておき、本作の最大の見せ場はキャサリン・ロスでしょう。ヌードがイヤだから断ったジェニファー・オニールに代わって、印象的なラブシーンを披露。一つめはホテルでのイチャイチャで、コンパクトボディを披露。二つめは夜の海上でのチョメチョメで、公然わいせつで捕まっても文句が言えません。全ての出来事が唐突に起きるので、恋愛映画としては消化不良ですが、裸を拝めたので私も文句が言えません。

監督のフィリップ・ラブロについてググってみたところ、映画監督だけでなく、作家、ジャーナリスト、作詞家、ラジオ局の副社長とさまざまな顔を持つ人物で、アメリカにいた頃にケネディ暗殺事件を取材していて、射殺犯オズワルドを殺害する数日前のジャック・ルビーと面会していたため、ウォーレン委員会に呼ばれた過去があります。興味深かったのは、私の好きな映画監督ジャン＝ピエール・メルヴィルの親友だったこと。彼が1973年8月2日に心臓発作を起こして亡くなったレストランでの夕食の場にたまたま立ち会ってました。この人自体が奇遇なめぐり合わせに縁のある人だったようです。

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Le hasard et la violence (1974 Philippe Labro)Yves Montand

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