「ペルシャン・レッスン戦場の教室」(2020)

デタラメ外国語レッスンでナチス収容所をサバイブする戦争映画をWOWOWオンデマンドで観ました。

監督はヴァディム・パールマン。予告編はコチラ。

ナチス親衛隊に捕まってトラックで連行されているユダヤ人青年のジル(ナウエル・ペレーズ・ビスカヤート)。収容所経由で処刑されるのは確実。絶体絶命です。すると、トラックを降ろされた人間をそのへんの森で銃殺していくナチス兵たち。自分が銃殺されそうになった寸前に咄嗟の判断で「私はユダヤ人に間違われて収容されたペルシャ人なんで助けてください」とさっき隣に座っていた男からもらったペルシャ語の本を見せて、必死の命乞いをします。運命のイタズラとでもいうのでしょうか、たまたまペルシャ人がいたら俺のところに連れてこいと将校から命令されていたため、ジルは処刑を免れて収容所行きに。収容所の所長であるコッホ大尉(ラース・アイディンガー)が時間潰しにペルシャ語を学ぼうとしていたらしく、講師候補として大尉の前に立たされるジル。ペルシャ語を話してみろと言われて、トラックの中で聞いた"父"という単語をペルシャ語でしゃべるジル。それ以降に聞かれた言葉は全部デタラメのペルシャ語で答えたところ、バレずに翌日からペルシャ語講師としてこき使われることになります。

1日4単語ずつ覚えれば、(終戦になるであろう)2年後には1,500以上の単語が理解できるようになって、テヘランで料理店を開く夢に近づくというコッホ大尉の目的のために、日々ペルシャ語の単語を教えていくジル。単語は全部デタラメです。死に物狂いになると驚異的な想像力と記憶力が生まれるのか、続々とペルシャ語の単語を披露して大尉の信用を得ていくジル。厨房の雑用係から、作業がラクな収容所の囚人名簿整理係に担当替えとなります。今度から1日40語ずつ覚えたいと言われて焦るも、囚人の名前をヒントにしてデタラメなペルシャ語を創造することで、終始眺めている囚人名簿と紐づけて単語を忘れないように頭の中に叩き込んでいくようになっていきます。ジルが優遇されることで名簿整理係というカンタンな職を奪われて、大尉の愛人の座からも滑り落ちた女性兵士のエルサ。新しく彼氏になった大尉の部下マックスと共闘してジルのウソを見破ろうと画策。注意深く行動していたジルもうっかり別の言葉を同じスペルにしてしまったり、本物のペルシャ人が囚人でやって来たりと、次々とピンチが訪れていき、果たしてジルは生き延びることができるのか・・・というのが大まかなあらすじ。

原題は「Persischstunden」。邦題と同じ意味。脚本家ヴォルフガング・コールハーゼによる実話を基にした短編小説「ある言語の発明」が原作。生き残りたいがためにペルシャ語と称して独自の言語体系を編み出してしまうという設定が秀逸。言語学者の協力を得て、映画独自の偽ペルシャ語を開発したそうです。外国語辞書が近くになく、Googleなんかない時代。限られた人物しかいない空間だから通用したウソを主人公が上手くつき通せるのかというサスペンス要素を過剰に煽ることなく、どっしりとした姿勢で演出しています。自然光を使った映像が静謐で、収容所の無残さがより引き立ちます。ジル役とコッホ大尉の役者さんが映画のトーンにぴったりの配役なのも絶妙。大尉に重宝されたジルは身の安全が保証されます。多めにもらった食物をそばにいた囚人に施したことで、後に迎えるピンチで難を逃れることも。周りの囚人が処刑のために移送されるのを見送りながら自責の念に駆られてしまう善人のジル。このまま生きながらえることがイヤになって一度は一緒に移送される道を選ぼうとしますが、大尉に止められて講師を続けさせられます。

コッホ大尉はジルに教わったペルシャ語を必死に勉強。地球上で二人だけしか知らない言語という点は妙にロマンチックでもあります。やがて、2,000語以上のデタラメなペルシャ語をマスターした大尉はお礼代わりにロマンチックな詩を作ってジルのために詠み上げます。ここからは話のオチになりますが・・・、アメリカが参戦してドイツは劣勢となり、収容所を撤収する命令が下されます。お前だけは絶対助けてやると言われていたジルは、コッホ大尉が一足先に逃げ出してテヘランにトンズラしようとした際に一緒に連れ出されて自由の身になります。しかし、大尉は無事到着したテヘランの空港で誰にも通じない意味不明なペルシャ語をしゃべったせいで不審人物と見なされて捕まってしまいます。一方のジルは森の中をさまよっているうちに、助けに来た連合軍に身柄を確保されます。ナチスが収容所囚人名簿を焼き払ってしまったため、どれだけの人数がいたのか把握できないでいた連合軍。2,800人の囚人の名前を覚えているという発言に驚いた連合軍スタッフの前で、ジルが死んでいった者の名前を1人ずつ泣きながら言っていくラストも見事な映画でございました。お色気場面はココだけなので、けっして見逃してはいけません。

ペルシャン・レッスン　戦場の教室（字幕版）

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「ペルシャン・レッスン 戦場の教室」

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