「見えない目撃者」(2019)

「ブラインド」の日本版リメイクを観ました。初見。

監督は森淳一。予告編はコチラ。

新米警察官の浜中なつめ(吉岡里帆)は、夜遊びをしていた弟を乗せた車で交通事故を起こしてしまって、弟は即死、自身は失明して失職。それから数年後のある夜。停まっていた車から助けを呼ぶ女性の声を聞いた歩行中のなつめ。車が急に走り去っていったため、不審に思って警察に通報。なつめが盲目だと気づいた刑事の吉野(大倉孝二)と木村(田口トモロヲ)は、彼女の証言の信憑性を疑います。一方、車に接触したスケボー少年の春馬(高杉真宙)は、車の中には女性がいなかったと証言。自分の耳を信じて疑わないなつめは、春馬を巻き込んで勝手に聞き込みを開始。やがて、なつめの並み外れた洞察力と警察官だった過去を知った木村と吉野も本格的に捜査に本腰を入れます。

捜査の延長上に挙がった男性の家に行くと、家の裏から数人の女性の死体が発見されます。犯人らしき人物は覚醒剤の過剰摂取で死亡していたため、捜査は打ち切り。しかし、失踪女子高生連続殺人事件の真相は別にあるのではと感じたなつめが、死体から切り取られた部位の特徴からある法則性を導き出して、さらには、真犯人の職業まで推理。助言を受けた木村が容疑者の自宅に行くと、犯人に襲われます。次の真犯人の標的はなつめになりますが、春馬の携帯電話からの遠隔アドバイスと盲導犬パルの決死の活躍でなんとか一命を取り留めます。しばらくして、真犯人の自宅に一斉捜査をする警察。その動きとは別に、なつめと春馬は吉野刑事と共に真犯人がいるアジトに侵入するのだが・・・というのが大まかなあらすじ。

劇場公開は2019年9月20日。たまたま事件に接触してしまった盲目の女性と男子高校生が、ちょっと頼りない刑事の協力を得ながら、異常殺人鬼と対決することになる大筋はオリジナルから拝借してるものの、細かく変更している箇所が登場人物の人間味やサスペンスのハラハラ度をUPさせていて、オリジナル以上に面白くなっています。主人公が犯人と最初に出会う設定が変更、主人公の推理能力がかなりUP、そして、犯人の正体を大胆に変更。真犯人が主人公たちのいる場所に殺しに行く終盤は、主人公たちが真犯人のいる場所に出向く設定にしている点も大きく違います。第二の目撃者と刑事コンビの人間性を感じさせるエピソードを追加したことで、それぞれの人物への感情移入度もUP。特に、なつめと春馬のバディ感が強まっています。最初はなつめに嫌々付き合わされていた春馬の中に正義感が芽生え始めて、この事件をキッカケに今後の人生への希望を見いだす流れがとても良いです。

得体の知れない真犯人が感情のない表情で次々と襲いかかっていく演出の畳みかけ方は出色で、被害者に「危ない！」と何度も声をかけてしまいたくなるほど。グロ演出も日本の商業映画としては上々。クライマックスでなつめが真犯人と直接対決する見せ場も良く、弟を亡くした交通事故場面をフラッシュバックさせなかった(他のリメイク作にはある)点もGOOD。ただ、目先のシチュエーションを緊迫感ある劇的なモノにするためだけに、登場人物があり得ない行動を選択しているところが多々ある点は否めません。決定的なのは、真犯人を特定できたにも関わらず、木村刑事が警察全体で情報を共有せずに単独行動してしまうこと。続いて、吉村刑事もなつめと春馬と三人だけで行動して、真犯人の毒牙にかかってしまう展開にも白けてしまいました。ただ、多くの説明セリフを言わされる不自然さも俳優陣の魅力がカバーしているし、(多くの女子高生の命は助かりませんが)盲導犬の命が助かる点は救われるし、トータルの感想としては、いろんなアラをかき消すパワーのある良作でございました。