「新座頭市物語折れた杖」(1972)

シュール風味のシリーズ第24弾をU-NEXTで観ました。

監督は勝新太郎。予告編はコチラ。

市(勝新太郎)がブラブラ歩いてると、吊り橋で婆さんとすれ違います。婆さんが弾いた三味線のお礼にお駄賃を渡そうとした時に婆さんが足を滑らせて川に落下して死亡。婆さんが会おうとしていた女郎をしている娘に会って、形見の三味線を渡そうと銚子に出向くと、女郎屋"扇屋"の一番人気嬢の錦木(太地喜和子)が婆さんの娘であることが判明。地元の親分鍵屋万五郎(小池朝雄)の賭場で荒稼ぎをして稼いだ大金で錦木の身請けをしようとする市。メクラを騙しにかかる博徒たちを翻弄して五十両をせしめた市は錦木の身請けに成功。まんまと出し抜かれた万五郎は、元々お尋ね者として首に百両の懸賞金が付いている市を用心棒やチンピラを使って命を狙わせます。

市と共同生活を始める錦木には丑松(中村嘉葎雄)という恋人がいて、隠れて二人で会っています。市がジャマだと思っている丑松を利用して錦木を拉致監禁した万五郎は、市をおびき寄せて集団で抹殺しようと試みるも、雇った刺客たちは全員返り討ちに遭います。しかし、人質になったままの錦木を助けるために仕込み杖を捨てて、万五郎の手下に両手を潰されてしまった市。両腕が使えなくなった市に哀れみの笑みを浮かべながら、勝負ありと見てトドメを刺さずに仕込み杖を返してやる万五郎。用無しとなった丑松を殺して、錦木をまた女郎屋に戻して、銚子を牛耳る親分としてますます威張り散らしていく万五郎でしたが、満身創痍の市が怒りの反撃を開始して・・・というのが大まかなあらすじ。

劇場公開は1972年9月2日。同時上映は、勝新の兄貴、若山富三郎主演の人気シリーズ第3作「子連れ狼死に風に向う乳母車」。海辺の砂浜でのロケ撮影シーンが多く、予算はあまり掛かってなさそう。と思ったら、ロケ地に台風が直撃してセットを作り直す事態があったとか。敵役の小池朝雄のふてぶてしい顔つきは良いものの、ラスボス感はちょっと弱め。小池朝雄の兄貴分として終盤に出て来る大滝秀治もクライマックスに傍観者として顔見せ程度の出演。市に身請けされる女郎役の太地喜和子が勝新に続くナンバー2の扱いで、(30才前とは思えない)オトナの色気を撒き散らしています。他には、せこいプータロー役の中村嘉葎雄、小池朝雄の手下役の藤岡重慶、女郎屋で奉公人として働かされている可憐な吉沢京子と女主人の春川ますみあたりがちょっと目立つ程度で、全体的なキャスティングも地味。

見どころはシリーズ初の監督となる勝新の実験的な演出。陰鬱さとカラフルさが混在した映像。海や水たまりの水面に何かを映すショットが多め。ラストショットも海辺をさまよう市。知恵遅れの男の出演場面(ヤクザ者たちに手コキされて放出するシーンあり)は本筋とほとんど関係なし。直接的なエロ表現はないものの、太地喜和子の濡れ場シーンはネットリとしつこく描いています。ストーリーの辻褄、バランスはそっちのけで、各シーンで即興性豊かな凝ったアングルの画作りに夢中で、座頭市という安定のフォーマットを担保にして好き勝手に映像遊びにいそしんでいます。肝心の市の居合斬りのシーンはそれほどキレがありませんでしたが、シリーズ屈指の異色作でございました。

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