「セイント・オブ・セカンドチャンス ベック家の流儀」(2023)

 

ベースボール愛と親子愛にまつわるドキュメンタリーをNETFLIXで観ました。

 

 

監督はモーガン・ネビルとジェフ・マルムバーグ。予告編はコチラ

 

1940年代からいくつかのメジャーリーグのチームを買収したビル・ベック。1970年代後半にシカゴ・ホワイトソックスのオーナーだった頃、ホームランが出るたびにバックスクリーン裏に花火を打ち上げたり、観客全員にアイスクリームを無料で配ったり、当時のディスコブームに乗ってグラウンド上でダンスコンテストを行ったり、独創的なアイデアで野球ファンに楽しみを提供していました。そんな話題に事欠かない名物オーナーの父の下で球団職員として働いていたマイクが『ディスコ・デモリッション・ナイト』なるイベントを企画します。野球に全く興味ない70,000人の観客(球場収容可能人数の倍近く)が集まったものの、グラウンド内はパニックとなって、2試合目が没収試合となってしまいます。この事件も遠因となって、球団を売り渡すことになったビル・ベックはしばらくして亡くなります。

 

マイクには不祥事を起こした汚名だけが残って、ドラッグやアルコールに溺れる日が続き、妻とも離婚して息子の養育権を奪われます。しかし、メジャーリーグのブラックリストに入ったダメ息子を拾う神もいて、独立リーグの"セントポール・セインツ"からチーム運営に手を貸してほしいという依頼が来ます。新たに出会った女性と再婚、娘も生まれたマイクは死に物狂いで働きます。やがて、別れた妻の息子も呼んで、小さい娘をマスコットガールにして、家族総出で不人気チームを盛り上げるべく奮闘。盲目の人を球場の実況アナウンサーに起用したり、女性選手や両足がない男をプロ入りさせたり、野球愛がある人にチャンスを与えます。メジャーからお払い箱となった選手との契約もその一つで、特に、ドラッグ等の不祥事でメジャーから追放されていたニューヨーク・メッツのスター選手ダリル・ストロベリーとのエピソードが一番興味深かったです。

 

父子二代でプロ野球チーム運営に奔走した男の話で終わるのかと思ったら、後半からは娘レベッカとの父娘愛についてのエピソードが話のメインとなっていきます。球団運営の仕事を最優先にして情熱を注いでいたマイクに変化を及ぼしたのは、娘レベッカの存在。父の影響で野球が大好きだった彼女が難病に襲われてしまったことで、マイクは自分の生き方を見つめ直します。プロ野球チーム運営に取り憑かれた男の話から、家庭そっちのけだった男が家族とどうやって向き合っていくのかという話に転じていく面白さのあるドキュメンタリーでした。原題の「The Saint of Second Chances」は、"セインツに第二のチャンスをもらったマイク"という意味と、"他の人に人生のチャンスを与えたマイク"という意味もあるようです。あと、ナレーションをジェフ・ダニエルズが担当しているのも聞きどころの一つと言いたいところですが、顔も出てこないので全く気づきませんでした。。。