「マスクガール」(2023)

 

人気の韓国産ダークコメディをNETFLIXで観ました。

 

 

監督はキム・ヨンフン。予告編はコチラ。全7話。

 

自分の外見にコンプレックスを抱いたままで大人になったキム・モミが主人公。歌って踊ることが大好きだった少女が、親や周囲からその顔で歌手を目指してんじゃねーよという冷たい視線を浴びるようになって挫折。2009年、27才になったモミ(イ・ハンビョル)は地味なOLとしての日々を送っていました。ある日、覆面をした姿でネット配信を始めたモミ。スタイルとダンスはK-POPアイドル並みモミの配信は固定ファンによる投げ銭で盛況となって、ネットアイドルとしてその世界では有名な存在となっていきます。日中は地味なOLのままなのは相変わらず。憧れの上司も会社の美人OLと不倫していることが分かって軽く失恋。不倫現場を目撃したモミがウワサを会社にバラまいたため、上司は会社をクビになってしまいます。ムシャクシャして酔っぱらったままのライブ配信で全裸で踊ってしまったため、配信停止の憂き目にも遭ったモミ自身も会社を辞めてしまいます。

 

そんなOLのグジグジとした日常が続くのは第1話だけで、ここから話がどんどん急展開していきます。まず、モミのネット配信の常連ユーザーの1人が、モミの勤務先の先輩だったことが判明。第2話は対人恐怖症のオタクである会社の先輩のこれまでの人生の歩みにフォーカスしていきます。彼がどういう人生を経てオタクになっていったか、偶然にもモミの配信にたどり着いて、どうやって配信者がモミだと特定できたのか、そして、なぜ殺人事件に巻き込まれていったのか。第3話は、そんなオタクを母子家庭で育ててきた母親にフォーカス。息子が事件に巻き込まれたために復讐の鬼と化していく序章が描かれます。第4話は会社を辞めたモミが出会った整形美女が主人公で、当然のように連鎖する殺人事件の当事者となっていき、第5話は2020年代に時が移っても続く負の連鎖、さらに、モミの現在に至るまでの人生が描かれる第6話、これまでの全ての因縁に決着をつける第7話へと続く・・・というのが大まかなあらすじ。

 

原題は「마스크걸/Mask Girl」。韓国のウェブトゥーンが原作。主人公キム・モミの行動に正当性を持たせているようにアレンジしてる点など、原作とはいくつか相違点がある模様。いわゆるリア充とは言えない人たちの癒しの場となっているネットの世界の負の要素を露悪的にカリカチュアライズして、実世界で殺人のソーシャルネットワークが形成されていく様子を、ダークな笑いを交えつつ、ショッキングなポイントを要所要所で盛り込みながらラストまで引っ張っていく語り口は見事です。とんでもない方向に発展していく荒唐無稽さの中に、コアなネットユーザーがネットに散らばる画像を手掛かりにして過去を隠した人物の正体を特定していくところなどの細かいリアリティを入れているところが上手いです。日本と似た点がありながらも、さらに露骨な韓国のネット社会やルッキズムの悪しき面をシニカルに描いています。ポスターやOPタイトルのビジュアルに使われている黄・緑・紫・ピンクなどの配色がドラマ内でも施されていて、美術センスも行き届いています。

 

主人公のキム・モミを演じているのは3人。まず、整形前のキム・モミを演じるのがイ・ハンビョル。地味扱いされているOLの残念な感じをうまく演じていました。整形後のキム・モミを演じるのは、元K-POPアイドルだったナナ。彼女のルックス自体が整形してなりたい顔の理想形だったりするので、ピッタリのキャスティング。そして、40代になったキム・モミを演じるのはコ・ヒョンジョン。韓国ドラマに詳しい人なら誰でも知ってる有名女優さんのようで、ノーメイクで熱演。で、シリーズのMVPは、第3話から登場するオタク息子のオカン役のヨム・ヘランで、彼女の怪演がドラマの中盤を引っ張っていきます。根性でネットリテラシーを高めていく姿に笑いながらも、愛する息子を想う母のペーソスを感じさせます。日本のアニメ大好きなオタクをほど良い気色悪さで演じる息子役のアン・ジェホンも好演。後半に出て来る少女もいい味を出してました。それと、2010年代前後にK-POPグループを熱心にチェックしていた時期があったので、第1話の美人OL役が元EXIDのパク・ジョンファだとすぐ分かったのがちょっと嬉しかったです。