おんな百物語 2 一枚の写真
最初に切り出したのは、髪を赤く染めた若い女だった。
整形を繰り返したのだと自ら語った。
*
なんのために?
とみなに聞かれて、最初は自分のためだったけどと答えた。
「ただ、好きになった人に合わせているうちに、
いつの間にか自分を見失ってしまった。
綺麗な自分でありたいと、
いつも自分の欠点を探すようになってしまった。
欠点はいくらでも見つかるものね。
普段はそれを忘れているだけ。
気にしだすとどこまでも気になって、
自分が自分に追いかけられている。
そのうちに・・・」 と女はいったん話を止めて、手元の缶ビールを開けた。
グイッと一口飲んでから、こう続けた。
「彼がほめたりけなしたり、
いろいろ口出しするようになったの。
最初はデートに着ていったセーターの色。
それから香水、マニキュア、髪の色、
だんだんエスカレートして、
目やあご、
鼻のカタチ、
唇の厚みのことまで言い始めた。
彼は大金持ちだったから、
言うとおりにプチ整形を繰り返したわ。
それに言うことを聞いていれば円満だったし。
ただ・・・もうすぐ結婚という段階になって・・・」
何かがあったのね? と皆が言った。
「彼の家に招待されたの。
家の奥座敷に導かれた。
そこには彼の死んだ両親の遺品などが並んでいたわ。
その奥の棚の扉を開けたとき、
驚いたわ・・・
本当に驚いた」
何かあったのね? そこに。
「ええ・・・そこに・・・あたしの写真があったのよ・・・古い額縁に入った・・・あたしの・・・」
なら好かれてたんじゃないの、なんで分かれたの?
なぜ?
お金持ちになれたのに。
おなたがおかしいんじゃないの?
みなの非難の声を聞いていたが、女は笑いながら最後にきっぱりと言った。
「違うの・・・その写真は・・・あたしじゃなかったの、えんえん、あたしを似せようとしたお手本、彼の憧れ そのもの、つまり・・・彼の・・・母親だったの・・・」
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