おんな百物語 2 一枚の写真 | 小説家のヒヨコがつづった物語

おんな百物語 2 一枚の写真


小説家のヒヨコがつづる物語




最初に切り出したのは、髪を赤く染めた若い女だった。
整形を繰り返したのだと自ら語った。



なんのために?

とみなに聞かれて、最初は自分のためだったけどと答えた。

「ただ、好きになった人に合わせているうちに、
いつの間にか自分を見失ってしまった。
綺麗な自分でありたいと、
いつも自分の欠点を探すようになってしまった。
欠点はいくらでも見つかるものね。
普段はそれを忘れているだけ。
気にしだすとどこまでも気になって、
自分が自分に追いかけられている。
そのうちに・・・」 と女はいったん話を止めて、手元の缶ビールを開けた。
グイッと一口飲んでから、こう続けた。


「彼がほめたりけなしたり、
いろいろ口出しするようになったの。
最初はデートに着ていったセーターの色。
それから香水、マニキュア、髪の色、
だんだんエスカレートして、
目やあご、
鼻のカタチ、
唇の厚みのことまで言い始めた。
彼は大金持ちだったから、
言うとおりにプチ整形を繰り返したわ。
それに言うことを聞いていれば円満だったし。
ただ・・・もうすぐ結婚という段階になって・・・」

何かがあったのね? と皆が言った。

「彼の家に招待されたの。
家の奥座敷に導かれた。
そこには彼の死んだ両親の遺品などが並んでいたわ。
その奥の棚の扉を開けたとき、
驚いたわ・・・
本当に驚いた」


何かあったのね? そこに。



「ええ・・・そこに・・・あたしの写真があったのよ・・・古い額縁に入った・・・あたしの・・・」


なら好かれてたんじゃないの、なんで分かれたの?


なぜ?


お金持ちになれたのに。


おなたがおかしいんじゃないの?




みなの非難の声を聞いていたが、女は笑いながら最後にきっぱりと言った。


「違うの・・・その写真は・・・あたしじゃなかったの、えんえん、あたしを似せようとしたお手本、彼の憧れ そのもの、つまり・・・彼の・・・母親だったの・・・」







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