責任

 

直ちに輸血の処置が行われた。

 

輸血治療による効果とリスクについての説明。

これは事前に書面をもらっていて

既に一読していたが

担当医から改めて簡単な口頭説明がされた。

 

感染症だのなんだのと

リスクを聞くとやっぱり気持ちが揺らぐ。

 

気持ちが変わらないうちに

さっさと輸血してくれれば

諦めもつくのに。

 

説明された上に

署名までしなくてはならないとなると

署名するのやめよっかな

的な気分になってくる。

 

そもそも輸血を希望してないからね。

 

退院を希望しても

治療不要の意志を伝えても

取り合ってくれないから

仕方なく輸血されてあげるんだよ。

 

私はここから出たいだけ。

 

どうせなら

あのまま2,3日放置して

ぶっ倒れているところに

本人の意志無関係に

輸血も手術も

終わってたら良かったのに。

 

なんてことを想像してみたりする。

 

いや、それはそれで

きっと周りをスッゴク恨んだだろうな。

 

でも今この状況で

自分の意志で以って

誰のせいにもできない環境を作られ

選択させられていることに対して

改めて腹が立つ

 

私の主張は聞いてもらえない。

輸血も治療も希望してないんだよ。

私は。

 

強制的に輸血や治療をしようとしているのに

直筆署名をさせて

あなたがリスクを承知で受諾したんでしょ?

 こちらに落ち度はありませんよ

と、何かあったときの保険をかけておく。

 

この行為がホントに気持ち悪い。

 

署名せず

輸血を拒み

退院を希望しても

「退院させられない」

と言い

 

こっそり抜け出すことも出来ないような

隔離病棟に閉じ込めて

希望していない治療を施すために

強制的に署名をさせる。

 

こんな暴力がまかり通っている。

 

治療して延命することは

本当にそんなに重要なことなの?

 

積極的に死にたいとは言ってない。

肉体の寿命が来たのならば

無理強いしないで

解放してあげたい。

それはそんなにいけないことなの?

 

何が何でも

「生」にしがみつかなければ

ならないものなの?

 

強制的に意志に反することを強いるのは

許されるものなの?

 

私はここから出たいだけ。

 

 

 

 

パーセンテージ

 

真っ赤な点滴パックが吊るされる。

 

今までぶら下がっていたのは

無色透明。

或いは半透明のビタミンカラーの点滴。

それに比べると

輸血用のパックは

どうしても不気味な色合いに映る。

 

人の血液。

 

不透明で真っ赤な液体。

トマトジュースとは似ても似つかない

青黒いような深みの帯びた

不透明で真っ赤な液体。

 

直視することが憚られた。

 

私はドラキュラ伯爵とは懇意になれないだろう。

 

輸血2単位280ml。

 

1日1単位。

2日に分けて2回。

560mlが注入される。

 

担当してくれている看護師の一人から

体重(kg)×80(ml)=血液量

であることを教えてもらった。

 

私の体重は約53Kg。

おおよそ4240mlの血液が

体内に循環している計算。

 

そのうちの560ml。

約13%の量の血液は

どこかの誰かの血液。

 

自分の中の1割が別人。

 

いまさら考えてもどうにもならないけど

やっぱり気持ちのいいものではない。

 

 

 

気付き

 

輸血が終わると

体調に変化が現れた。

 

今まで「健康」だと思っていたが

やはり「不健康」だったのだと気付かされる。

 

体が軽い。

肩も頭も軽い。

頭痛もない。

 

視界も開けているように感じる。

 

具体的な変化としては

スマホの画面を見ていても

気持ち悪くならない。

活字を読む速度が格段に速い。

文章の内容もすんなり頭に入ってくる。

 

情報の分析や繋がりも考慮できる。

思考が働く

 

貧血状態だった時には

気づかなかったが

肉体面だけでなく

頭脳的なパフォーマンスも

かなり落ちていたのだ。

 

そういえば 最近

入院する数か月前に比べ

集中力の持続性もなくなっていた。

 

あれは年齢的な衰えか

或いは慣れから来る怠慢だろうと

高を括っていたが

どうやら貧血が原因だったらしい。

 

全てにおいて貧血が原因がとは言うのは

乱暴ではあるが

多少なりと影響していると言えるだろう。

 

世の中にいる

ちょっと容量が悪いなとか

理解するのが他者より遅いなと感じる方。

もしくは以前の自分に比べて

肉体的にも頭脳的にも

パフォーマンスが落ちたなと思う方は

一度貧血を疑ってみるといいかもしれない。

 

鉄分を摂取したら

格段に能力が上がるかもしれないぞ。

なんて仮説を立ててみた。

 

私が一番驚いた変化は

掌の色

 

手を洗う際に目に入る掌の色が

今まで見たことがないくらい

赤い

 

不気味なくらい

赤い

 

以前はこんな色ではなかったように思う。

もっと白かった。

それだけ血液が薄くなっていたということか。

 

貧血度合いの指標として

掌の色を見ると良いのかもしれない。

自分がひく位の赤みがなければ

きっと貧血だ。

なんて仮説を立ててみた。

 

誰か研究している人とかいたりするのかな。