治療

 

婦人科検査の結果

子宮腺筋症であることが判明した。

 

聞きなれない病名だったが

婦人科の疾患としては

子宮筋腫子宮内膜症と並ぶほど

ポピュラーな病気であると

医師からの説明があった。

 

治療方針は二つ。

手術による全摘出

ホルモン調整剤による薬物治療

 

手術

費用もかかるし

傷も残るし

痛みも伴う。

が、短期間で治療が完了することに利点がる。

 

薬物治療

1回の費用は高額ではないかもしれないが

継続的に費用が掛かり

手術をするのと同程度の費用がかかる。

更に長くても半年しかできない

 

薬で強制的に女性ホルモンを抑えて

閉経と同様の状態を作り出すことで

子宮腺筋症による出血は抑えられるかもしれないけれど

その他の弊害

例えば骨粗しょう症の発症などの可能性がある。

そのため薬物投与は半年しか続けられないらしい。

 

半年後の状態によって

また治療方針を決めなければならない。

 

自然に閉経して出血も止まっていれば

そこで終了だが

もし閉経していなければ

使える薬があるかどうかの検討をしなければならないし

使える薬がなければ

手術をする以外には選択肢がないらしい。

 

年齢から鑑みるに

半年後に自然閉経している確率は低い。

 

結局、薬物治療を選択したとしても

半年後には手術が待ち受けているっていうことじゃないか。

 

要はこの病気に罹ったら

完全治癒することはないということだ。

 

そんなことを説明されたが

そもそも治療を希望していないということを

忘れられているらしい。

 

治療ありきの話にうんざりしていたが

手術も投薬も

まずは現状の貧血を改善してからじゃないと

施すことが出来ないと言われ

再度輸血をするように説得された。

 

社会復帰を考えているのならば…

 

と言われたが

社会復帰せず

このままお別れしても構わないって

伝えているのにそこは聞いてくれないんだな。

 

強制的に治療します。

という押し売りをされて

えらい迷惑だというのにそれは取り合ってもらえない。

 

このまま輸血を拒み続ければ

衰弱してお別れ

ということになるだろうか。

 

手術してでも

薬漬けになってでも

生き延びたいとは思っていない。

 

手術してでも

薬漬けになってでも

誰かから心臓や腎臓をもらってでも

生きたい。

という意志は尊重されるのに

 

手術して

薬漬けになって

誰かから心臓や腎臓をもらって

生き長らえたいとは思わない。

という意志が尊重されないのは何故なんだろう。

 

 

 

 

説得

 

病室には

入れ替わり立ち代わり人がやってくる。

 

見舞いではない。

輸血の説得だ。

 

何故輸血しないのか。

何かの宗教的な問題で拒んでいるのか。

 

このままでは手術できませんよ。

もう少し遅れていたら危なかったんですよ。

 

似たようなことを聞きに言いに

代わるがわる看護師や医師が聞きに来る。

 

いい加減気が滅入ってくる。

 

丸1日以上

点滴に繋がれ

酸素吸入をされ

ベッドから離れることができない状態で

洗脳しにやってくる。

 

それでもガンとして拒んでいたら

とうとう医局長の肩書がついているらしい

医師がやって来た。

 

止血剤入りの点滴と

鼻から絶え間なく送られる酸素と

鉄分多めの食事のおかげで

出血は止まっているし

心拍数がバク上がりするようなこともなくなった。

 

もう退院してもいいくらい

普通に過ごせているのだと主張したが

相手もそれをまともに取り合う気はないらしい。

 

「私が診た中でも

 相当具合の悪い患者さんの部類に入りますよ。

 顔面蒼白で」

 

そう言って輸血を勧めてくる。

 

もともと色白なんです。

 

と、のどまで出かけかが

声に出すのは踏みとどまった。

 

別に言い争いをしたいわけではない。

 

手術も投薬も望んでいないから

このまま退院したいということを分かってもらいたい。

それだけ。

 

でも

病気を治すとか

助けられる命を助けるとか

「生きる」ことを続けさせるための職業についている人には

きっと理解が出来ないんだろうな。

そんな風に感じた。