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ショコラのブログ

ブログやら語り。

①の続きです。
 



4.オラフの存在
 今作のマスコット的なオラフですが、彼にはエルサの幼い頃の思い出が込められて作られています。
幼い頃の姉妹が作ったものと同じ容姿と名前であるだけでなく、「ぎゅーっと抱きしめて」「お空も起きてる」と、幼い頃の姉妹と同じ台詞が彼の台詞として後に出てきます。
「ありのままで」の歌の最中にエルサによって作り出されるオラフは、ありのままでいられた幼い頃の気持ちが込められているように思えます。
初登場シーンでのオラフの独り言、「一面真っ白。だけど白過ぎない?もっと色を足したらどうかな?」というのは、孤独で自身の世界を染め上げてしまっているエルサや冬に閉ざされた王国の事を暗示しているようで意味深です。
 「愛は自分より相手を大切に思う事」と言うオラフ。
アナが孤独であろうと、自身が苦悩しようと、アナを守ろうとしてきたエルサ。
自分よりアナの事を大切に思い、愛しているからこその行動。
そのエルサが作ったからこそ、オラフは真実の愛の定義を知っているのかもしれません。
後述の通り、エルサが自身への恐怖を乗り越え、王国に夏を取り戻すためには真実の愛が必要。オラフが夏に憧れるのは、彼自身に真実の愛の意味が込められているようにも思えます。
 クライマックスにかけてアナを救うための活躍を見せるオラフですが、王国を救う真実の愛を知っていて、姉妹の幸せな思い出の象徴とも言える彼だからこそ、今度は彼自身がエルサによって救われ、エルサと併せて王国に受け入れられて生きていくべきなのです。
 
5、アナの強さ
 エルサは自分の生き方を見つめ直そうとする強さと、恐怖によって思い詰めてしまう弱さがありますが、アナの強さは信じる事にあると思います。
 前述の通り、事情を知らないアナにしてみればエルサは、理由も言わずに自分を拒絶し続け、両親の葬式ですら会ってもくれなかった姉。
 そんな姉が王国を凍らせて逃亡しても「大丈夫に決まってる。だって姉さんなんだもの。」と言って信じて追いかけ、戴冠式での事も素直に謝ろうとする。
 エルサの魔法によって心が凍り、死にかけている事にショックを受けても恨んだりはせず、
身を挺してエルサを庇う。
 バカが付くほど素直に、どこまでもエルサを信じるアナだけど、信じ抜くというのは心の強さがないと挫けてしまう事なので、これが彼女の強さだと思います。
きっと大丈夫と人を信じ続けるより、どうせダメだと諦める方が気が楽ですからね。

 ただ、素直だけど危なっかしさもあるので、放っておけないと思っているうちにクリストフはアナに惚れていったのでしょう。
か弱くて守ってあげたいのではなく、素直で一生懸命だからこそ力になってあげたいと思わせるタイプ。
 トロール達の歌の「愛があれば。」はアナとクリストフを結ぼうとする内容だけど、これはかなり意味深な曲です。
「孤独に暮らしているのは愛されたいから。」これは、クリストフにもエルサにも当てはまります。
皆を傷つけないために孤独でいるエルサにとっても、トロールの家族やスヴェンはいても「人間はろくでなし」と言ってのけるクリストフにとっても、アナは救いになる存在です。
 そして「愛があれば。」の歌詞の「怯えてると道見失う。でも愛さえあれば最高の道選べる。」「誰でも完璧じゃない。それでいいのさ。お互いに支え合えばいい。」というのは、今作そのものに関わるテーマのようにも思えます。
 
 ちなみに、孤独を抱えている人といえばヴィランズのハンスもそうです。
兄達からは存在しないように扱われ、王位継承の序列は遙か下位。
でも、どれだけ暗い生育歴を持っていても悪事を正当化するものにはならないし、関係のない国の姉妹を殺そうとしている時点で紛れもない悪です。
 王位を奪う事に執着し、アナを裏切る事で彼は、祖国で得られなかった愛情を得るチャンスを台無しにしてしまったのです。
 
6、男性の存在
 この作品や同年に公開された「マレフィセント」について、「ヒロインが王子様(男性)を必要としない時代」だとか「女性だけで問題を解決できるので男性不要」と言う人がいますが、それは違うと思います。
「マレフィセント」の感想記事でも書いた事ですが、そういう人は男性=今作の悪役(ハンスやステファン)しか見えていないのでしょうか。
 確かに、プリンセスの幸せの象徴である王子をヴィランズにしたのは斬新ですが、本当に悪い男性しか描かれていないでしょうか。女性だけで問題を解決しているでしょうか。
 アナがエルサの元にたどり着けたのも、エルサを守り、分かり合えたのも、オラフやクリストフとスヴェンがいたからです。
姉妹(女性)だけでハッピーエンドまでたどり着いたわけではありません。
 アナのためを思って身を引こうとし、アナのために危険を顧みず、駆けつけてくれたクリストフ。
愛したはずのハンスに裏切られ、愛の定義も分からなくなっている時にアナは彼の想いを知って、素直に嬉しかっただろうし、救いになったはずです。
自分のためにここまでしてくれた彼の想いを受け入れ、結ばれたのでしょう。
 女性が自立する時代と言われますが、何も男性の存在は依存か不要の二択ではなく、「愛さえあれば。」の歌詞にあるように、お互いに支え合う事が必要です。
 
7.真実の愛
 エルサを始め、クリストフやオラフにも愛されてきたアナですが、凍った彼女を救う真実の愛は「愛される事」ではなく、「愛する事」です。
アナはエルサを救うために身を投げ出し、愛する事を示した事で、自分自身で氷を溶かしたのです。
 エルサの魔法に関する記憶も戻らないので、エルサが今まで自分を守ろうとしてくれたから自分も守るのではなく、あくまで純粋にエルサが大切だから守るという無条件な愛を示したのです。
 エルサにとって守るべき、傷つけてはならない存在だったアナは、傷ついてもなおエルサを守ろうとする強さを見せたのです。
これによってエルサもアナを信じて、自分を信じる事が出来たので、王国の冬を解除出来るようになったのでしょう。
 凍ったアナを救う鍵が真実の愛なのも、その魔法をかけたエルサ自身が愛される事=ありのまま受け入れられる事を求めていたからなのかもしれません。
 
 ディズニー映画で普遍的に描かれてきた真実の愛を、恋愛だけでなく姉妹の愛として広げ、かといって恋愛も否定せずに描き、愛の定義を示したところが今作の大きな魅力だと思います。