
「信じれば夢は叶う」が昔からのディズニーの総テーマであり、ウォルトから受け継いだ理念でもあるのは言うまでもない。
昔は、白雪姫やシンデレラのように
「過酷な状況に置かれている人物が決して絶望せず、幸せになる夢を諦めない明るさを失わず、ついには幸せを手に入れる」物語があった。
次の時代は、アリエルやアラジン、ベルのように「新しい世界を夢見る行動的な主人公」の時代。
そして、ムーランのように「時代や立場に縛られず、本当に自分に出来る事」を見つめようとする主人公や、
ティアナのように「夢はあるけど、願うよりも現実的な努力をする主人公」と「望むモノと必要なモノの違い」を同時に描いている。
ラプンツェルでは「夢が叶った後に次はどうするか」といった従来のハッピーエンドの後の事や、「誰にでも夢がある」という忘れかけた夢を思い出す事についても描かれている。
そして現代、
シュガーラッシュで、ラルフは「ヒーローになりたい夢」を持っていたが、それはそのままの形では叶っておらず、彼は悪役のままでいる。
でもラルフには、ヴァネロペちゃんという大切な存在が出来て、「ゲーム内のヒーロー」にはなれなくても「大切な人にとってのヒーロー」にはなれている。
そもそも「ヒーローになりたい」=「皆に認められ、孤独から抜け出したい。」という思いが根底にあるので、ヴァネロペちゃんを始めとする仲間がたくさん出来た事で、彼のその思いは叶えられている。
ヒーローにはなれなくても、悪役である事を受け入れて誇りを持つ事が出来るようになり、当初に描いた形とは違った形で夢が叶えられている。
モンスターズ・ユニバーシティでは「子供の頃からの夢のために、人一倍の努力をしても、才能や体格のせいでどうにもならない現実」を描いている。
「信じれば夢は叶う」のディズニーで、「信じても努力しても夢が叶わなかった現実」が描かれている異色作と言える。
でも夢敗れたマイクは、その挫折の思いや嫉妬めいたものをサリーにぶつけた時に、サリーの気持ちを打ち明けられ、二人は本当の親友になる。
お互いの足りないものをカバーし合って、一人では叶わない夢も二人なら叶えられるという、どうにもならない現実に直面してもまだ出来る事がある前向きな物語になっている。
こんな風に、夢の描写も時代と共に、少しずつ変化してきているようだが、根底にある「信じれば夢は叶う」、つまり夢を持つ事の素晴らしさの描き方は変わっていない。
悪役がヒーローになりたい。
小さなモンスターが最強の怖がらせ屋になりたい。
農薬散布用の飛行機が世界レースに出たい。
ドブネズミが一流のシェフになる。
雪だるまが夏に憧れる。
小柄なウサギが警察官になって活躍したい。
困難なように思われる夢に堂々と挑むキャラ達の姿勢は、ウォルトの姿勢を感じる。
オズワルドの版権奪われたり、戦争や世界恐慌といった過酷な時代でも絶望せず、
無謀だとか、道楽だとか言われても、世界初の長編アニメーションを作り上げ、ディズニーランドを作り上げたウォルトの理念が、彼が亡くなった後の現代の作品にも表れてると思う。
明日から公開されるズートピアにも、
「誰でも何にでもなれる。」というテーマが置かれてるようだが、観るのを楽しみにしている。