ニックとジュディが可愛すぎて気になってたので、アナ雪の時並みの期待を寄せてましたが、期待以上でした!

以下、ネタバレ全開で行くので、嫌な方は読まないでください。
結末や物語の核心にも触れてます。
長くなるので、2つに分けます。
①楽園街ズートピアについて。
この世界の中心となる大都会、ズートピア。
此所では多種多様な動物が暮らせるような工夫が施されていて、街の様子を観てるだけで面白かった。例えば、
・列車の乗降口が動物の体の大きさに合わせていろいろある。
・ジュース屋で、リスの店員がキリンの客に商品を出す時はリフトのような装置で上から出す。
・カバの駅の通路は水場になっている。
・ネズミの営業マン達は筒のような通路を通る。
等々、ディズニーの発想力の高さには本当に感心する。
②差別と逆差別
ウサギに生まれたら人参農家をやるのが似つかわしい生き方と言われるこの世界で、ジュディは初めてのウサギの警察官。
しかし、他の警察官達は水牛やサイや狼みたいな大きくて屈強な動物ばかり。
ジュディはウサギである小柄な体や力の弱さは知恵で補い、警察学校は首席で卒業するほどの努力家。
モ大のマイクが怖がらせ屋にふさわしくない小さな体をカバーするかのように人一倍努力したのを思い出した。
でもいくら首席で卒業しても、ウサギというだけでジュディは認めてもらえず、事件捜査みたいな大きな仕事はさせてもらえない。
羊のベルウェザーが、副市長でありながら重要な仕事はさせてもらえず、秘書としてこき使われ、ライオンの市長からは蔑称で呼ばれてるのと同じ。
(そもそも彼女を副市長に任命したのも、市長が羊の支持率アップを狙ったため。)
古代、草食動物は肉食動物に食べられる存在であり、非力なものが多いためか、
動物達が二足歩行で文明を築き、捕食と被捕食の関係がなくなった現代のズートピアでも、草食動物への差別がある。
そして、差別されているのは草食動物だけではなく、特に狐は「ズル賢く信用できない」イメージから、この世界では嫌われる傾向にある。
子供の頃、他の狐のギデオンに苛められたのに対して「ギデオンが意地悪だっただけ。他の狐は関係ない。」と言ったジュディですら、狐のニックと初めて会った時、彼が象のアイス屋に入っていくのを見かけただけで狐避けスプレーを手にして後をつけたし、象の店員も彼にアイスを売ろうとはしなかった。
(実際、ニックは詐欺紛いの転売目的でアイス屋に入ったのだけど。)
ニックは子供の頃、ジュニアレンジャー部隊に入ろうとしたら、彼以外のメンバーが全員草食動物の子供達で、「肉食動物で、まして狐は信用できない。」という理由から、初対面で無理矢理、口輪を付けられたというトラウマがあり、
「世界が固定観念を持つなら何をしても無駄。」「夢なんか持っても無駄。なれるものにしかなれない。」と考えるようになり、世間のイメージ通り、詐欺師になった経歴あり。
狐という種族への固定観念と差別。
そしてベルウェザーの陰謀とジュディの軽率な発言で引き起こされた肉食動物への逆差別。
行方不明事件の被害者は肉食動物ばかりで、突然、原因不明に凶暴化して他者に襲いかかるようになっていた。
マスコミに原因について質問攻めにされたジュディは、医師がとある見解を口にしてたのを思い出し、それをそのまま言ってしまう。
「古代、他の動物を襲って食べていた肉食動物のDNAが原因かもしれない。」と。
ジュディに悪気はなくても、その言葉は「肉食動物は全員、凶暴化する恐れのある存在」と言ってるのと同じで、ニックのトラウマを抉ってしまう。
いくら「あなたは違う!あなたの事を言ったつもりはない!」と言っても、取り繕えない。
ニックに責められた時のジュディは、無意識のうちに狐避けスプレーに手を伸ばしていて、たぶん無意識に彼を怖いと感じてしまったんだと思う。
二人で行方不明者を見つけ出す事に成功して、ジュディは彼にパートナーになってほしいと言ったばかりなのに、
彼女の怯えた反応を見て、
「・・・だよな。狐をパートナーにするのは止めた方がいい。」
って自ら離れてくニックが切ない。
上京時にジュディの父親が持たせた狐避けスプレー。
彼女がそれを持ち歩いてるのを、出会った時から気づいてたニック。
それでも、彼女は自分を信じてくれてると思ったから今まで問い詰めなかったんだろうね。
ジュディの発言によって、肉食動物への恐怖心が広まり、草食動物から肉食動物への逆差別が街に蔓延してしまう。
この事件の黒幕のベルウェザーの狙いは
肉食動物への恐怖で街を支配し、肉食動物を排除し、草食動物中心の世界を作り、自身が市長としてその世界を支配する事。
アナ雪では、侯爵みたいに、エルサの事情を知らない人達が彼女を恐れ、彼女を排除しようとしたし、エルサも自身への恐怖心よって魔法を暴走させてしまった。
ベルの街の人達が、いくらリーダー的存在のガストンに煽られたとはいえ、野獣殺しに満場一致で向かったのは、野獣という未知の存在への恐怖心。
フロローや一部の街の人がジプシーを差別したのは、彼らが異端であり、まじないのような得体の知れない事をする(と思い込んでる)事への恐怖心。
原因が分からない事への恐怖、自分と違うものに恐怖したり侮蔑する事、怖いものや違うものは排除しようとする動き。固定観念。
これらが差別や逆差別の基になるというのは、物凄くシビアだと思う。
ズートピアは体格も種族も性別も違う、多種多様な動物が共生する理想郷に見えるけど、そこには差別や逆差別や固定観念が根付いてる。
まさにリアルな人間の世界と同じ。
ジュディがラストで言った「違いを認め合う事」は、リアルな世界にも必要なテーマだと思う。
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