ファインディング・ニモ | ショコラのブログ

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ファインディングドリーの公開間近、そしてファインディングニモが放送されたので、記事にしました。





①美しく、危険な海

「ニモ」はピクサーの中で一番好きな作品。
まず、海の世界観が大好きだし、描写が美し過ぎる。
色鮮やかな珊瑚や魚達、水中の水や光の揺らめき、水面の輝き、
海の中って本当に綺麗だな、と思える描写。
ただし、海という自然は危険がつきまとう危険な世界。
マーリンの妻のコーラルやニモの兄弟の卵達は冒頭で、あっさり食べられてしまう。
あと2日で生まれるはずだった卵達の生命、我が子達を守ろうと捨て身で戦ったであろうコーラル。
マーリンとドリーも、旅の途中で何度も他の生物に危うく食べられかけ、何度も死線を越えて旅をしなきゃならないほど危険な海。
ターザンの冒頭や、バグズライフもそうだけど、ディズニーやピクサー作品はファミリー向け作品から逸脱しない範囲を保ちつつ、自然の美しさと同時にシビアな面も描いてると思う。


②マーリンの父親像

マーリンはかなり過保護で、心配症な父親だが、彼は妻も大半の子供達も1度に失った過去を持ち、絶望の中で唯一生き残った子供がニモなのだから、過剰に心配するのも無理もない。
実際、前述のように海は危険な世界だし。
過保護な父親と見られがちだが、彼はとても良い父親だと思う。
片鰭だけ小さくて上手く泳げるか不安があるという、障害ともいえるものを持つ我が子に対して「幸運の鰭」として接している。
その反面、心配症なために何かあるとすぐ「おまえには無理。」「自分にはできるつもりでも無理なんだよ。」と言って、子供の自信を削いでしまう。
これは前述の通り、心配症になるのは無理もない理由からだけど、その思いは我が子にはあまり伝わっておらず、反感を買ってしまうし、ニモに「パパは海が怖いから。」と思われている。
親の心、子知らず、子の心、親知らずとはよくいったもの。

メリダのエリノアや、リトマメのトリトン王、アナ雪の国王夫妻、ズトピのジュディの両親もそうだけど、どんなに我が子を愛している良い親でも、我が子を思うあまり過剰な行動や子供の反感を買う行動に出てしまう事はある。
良い親でも、感情や思いを持ってるからこそ完璧な親なんていない。
そんな事を考えさせられる。


③対照的なクラッシュやギル

心配症で、子供には何も起こらないようにするというマーリンに対して、クラッシュやギルは対照的だと思う。
クラッシュは同じ、子を持つ父親でありながら、我が子が海流の外に吹き飛ばされても動じない。
すぐには助けに行かず、子供がどうするかを観る事で、子供自身に考えさせ、自分でなんとかしようとする力を学ばせようとしているのだと思う。

ギルも、ニモが水槽内の管にはまっても助けず、「自分で抜け出せ。」と言う。
ニモの片鰭が小さくてもそれを理由に助けたりはせず、一方でアドバイスを与えながら、自分でなんとかさせようとする。
しかし、本当に危険な事態が起きたら全力で助けてくれる。
彼はニモに危険な事をさせてしまったが、父親に「おまえには無理」と言われ続けたニモにとって、「おまえなら出来る」と信じてくれた事は大きな成長に繋がったと思う。
その上で、ナイジェルから聞かされた父親が自分のために危険を厭わずに旅しているという事。
パパも頑張ってるなら僕も頑張ろう、と思ったから、水槽脱出計画に自発的に再び挑む勇気を持ったんだと思う。


④父親の成長物語

この作品の面白いところは、子供だけでなく父親の成長物語でもあるという事。
我が子がいなくなった事で、心配症なマーリンは絶望的な状態で旅をする事になるが、ドリーと出会って、彼女の健忘症にイライラしながらも、彼女の存在に救われていると思う。
まず、一人ではない事。
ドリーと一緒に旅する中で、反発したり疑いながらも、相手を信じる事を学んでいく。
彼女が言った「子供に何も起こらないようにしたら、子供は何も出来ないわ。」という台詞も凄く印象的。
これらの事を経て、マーリンはクライマックスではついに、危険な状況でやっと再会した我が子に「おまえなら出来る。」と言って信じようとするほどに成長する。

見事にドリーや皆を助けた息子を抱き寄せて、まだ彼が卵だった頃のシーンがフラッシュバックする描写になっているが、あの傷ついた卵だった息子がこんなに大きくなって、友達を助けるほど逞しくなったんだという、子供の成長が感じられるが、
同時に、我が子を信じて見守る事が出来るようになった父親自身の成長でもあると思う。




という事を考えながら、久々の地上波放送を見てました。
公開間近のファインディングドリーも、どんな「家族の物語」になるのか楽しみです。