●食べず嫌いのワンコ-食物新奇性恐怖
動物は、単食性動物と雑食性動物に分けられます。
ユーカリの葉だけを食べるコアラや生肉だけを食べるライオンは、単食性動物です。人間は、雑食性動物ですが、ネズミやクマなども雑食性です。
犬の祖先とされているオオカミは、肉食の単食性動物ですが、イエイヌは、人間に飼われているうちに雑食するようになったと考えられています。言えば、肉食に傾いている雑食性です。
雑食性の動物は、いろいろな食べ物から栄養分を摂ることができますが、食べたものに毒があったり、腐っていたりするリスクも高くなるため、初めて口にする食べ物に対しては、警戒する本能が備わっています。
この本能のことを「食物新奇性恐怖」と呼びます。
「うちの子は、新しいものをあげても食べてくれないから」とおっしゃる飼い主さんがいますが、愛犬が食べたとしても一口ぐらいでやめてしまって、あとは食べようとしないのは、この「食物新奇性恐怖」によるものかもしれません。
人間の子どもの偏食にも、この「食物新奇性恐怖」に関係するものがあると指摘されています。
「家族それぞれが好きなものを食べる」という「個食」は、幼い子どもが毎日、自分の好きなものだけを食べるという食習慣を身につけさせることになります。
そして、今まで食べたことのないものは避けるという偏食に陥り、栄養バランスが崩れて、健康面での問題を生じさせることにつながります。
この食物新奇性恐怖を治す有効な方法は、あたり前のことですが、「慣れるまで食べさせ続ける」ことで、心理学では「単純接触効果」と呼ばれています。
しかし、子どもに嫌いなものを無理やり食べさせると、それをもっと嫌いになってしまうことがあります。これは、「食物嫌悪学習」と呼ばれ、気持ち悪くなったり、食べたものを吐いてしまったりと、逆効果になります。
「ニンジン嫌い!」という子どものお母さんは、すりおろして形を変えてしまう、あるいはそうと分からない味付けにしてしまうといった努力をしています。
ワンコにも、おいしく食べさせる工夫、例えばちょっと暖めて、おいしいにおいで嗅覚で食欲をそそってみることなどをお勧めします。
もっとも人間の子どもでは、「嫌い!」と言っていたニンジンやピーマンを畑で育てさせ、自分で収穫して、調理させると、自然に食べられるようになったという例が報告されています。
もともと食わず嫌いのワンコがいるわけではなく、飼い主さんがそのように育ててしまっていることも考えられます。ワンコが喜んで食べてくれるからと「鶏のササミ」ばかりあげるのではなく、いろいろなお肉をローテーションで食べさせてみることにも挑戦してみてはいかがでしょう。