「フラゴナールの婚約者」 ロジェ・グルニエ著 みすず書房刊


愛犬コンシェルジュ~お散歩仲間の立ち話~-フラゴナールの婚約者


「アルルカンの誘拐」


アルルカンは変てこな犬だった。


うっとうしい顔、目の下のたるみ、サン・テュベール犬の大きな垂れ耳、ハンガリー・ポインターの赤毛、背中の縮れ毛、先が玉房になっている長い尻尾、タンゴダンサーのガウチョパンツを思わせる長い毛の密生した前足。


飼い主がアルルカンと名付けたのは、こんな風に寄せ集めみたいな恰好をしていたからか。いやそうでもなさそうだ。