心に残るとっておきの話 第3集 潮文社編集部編


「ナチとコロ」 鷹野信子作 大正10年生まれ (北九州市)


ナチとコロは、我が家の近くのお隣りどうしの家で飼われていました。


高校性の娘がかわいがっていたので、2頭揃って、娘が学校から帰る時間になると玄関先で待っていました。


ナチはいつもコロを従えていて、コロはナチより先には食べ物に口をつけませんでした。


秋も深まった頃、コロは体調を崩してしまいました。


ある日の夕暮れ時に、コロはシッポを垂れて体をひきずるようにして、我が家にやってきました。そして、与えた肉を食べようともせず、ただ、力ない目つきで娘の顔を見上げていましたが、しばらくして、すごすごと帰っていったのです。


その時以来、コロの姿が消えてしまいました。


冬が来て、雪が降ったある日、ナチがやってきて、私を誘うように振り返り、振り返り、山へ山へと入って行くので、私もナチについて山に入りました。


そして、ナチが一本の木の根元を一生懸命に足でひっかくので、私も一緒に雪をかき分けました。


何とそこには、コロの死骸があったのです。


私は驚きと悲しみで泣きながら、ナチの頭を撫でて、よく教えてくれたねとほおずりをしました。


急いで家に帰り、箱と布を持ってきて、コロの死骸を布に包んで箱に入れ、スコップで掘った穴に埋めて、こんもりと土を盛り、近くにあった石をその上に置きました。


あれから25年も経ちましたが、人間にも劣らないナチとコロの友情を忘れることはありません。


(本文より抜粋編集)