動物と触れ合うことで、心身の健康を維持したり、回復を目指すことをアニマルセラピーと呼んでいますが、この言葉は日本の造語なのだそうです。
動物との触れ合い活動の分野では、アメリカの民間団体「デルタ協会」が有名ですが、国際的には次のように呼ばれています。
「アニマル・アシステッド・アクティビティ」(動物介在活動)
動物と触れ合うことによって、情緒的な安定やレクリエーションを目的とする
「アニマル・アシステッド・セラピー」(動物介在療法)
目標を設定して、専門的な治療行為として、動物を介在させる
日本では、(社)日本動物病院福祉協会(JAHA)が1986年からスタートさせた「人と動物のふれあい活動(CAPP)」がよく知られていて、福祉施設や学校などへの動物の訪問活動は、2009年2月現在で通算9,500回にも及んでいます。
CAPPに参加した高齢者延べ109人を対象に、効果を検証したところ、動物がいる場合には、相手の目をじっと見るアイコンタクトは9倍、会話やうなずきは約2倍に増えており、高齢者の活動が活発になっていることが分かりました。
東京都清瀬市の信愛病院では、2002年から動物介在療法「犬と行うリハビリプログラム」を実施しています。
このプログラムには、常に理学療法士、作業療法士が利用者に付き添って、安全に配慮されながら行われています。
参加者が犬好きということで、犬と一緒だとモチベーションがあがるということが一番の魅力。そして、手や足を動かすことだけに集中する動作と違って、犬に対して何かを働きかけるという内容なので、自然な動きが出てくることが好ましいと捉えられています。
「犬とのリハビリプログラム」
・ボール投げ
利用者の投げたボールを犬がくわえて持ってきます。手や腕や肩のリハビリになり、犬が喜ぶのでもっと遠くに投げようとします。
・足ジャンプ
車イスに座った状態で足を上げ、その足の上を犬がジャンプします。
・ブラッシング
犬を優しくブラッシング。手や首のリハビリになり、ブラッシングをかける場所によっては、立つ動作も必要に。それも足の強化につながります。
・散歩
犬といっしょに歩行訓練。セラピー犬の名前を呼んでアイコンタクト。それが励みになって、がんばって歩けます。
(ジャハフレンズ Vol.6 2007年より)
岡山市の介護老人施設・高松アクティブホームでは、一定の訓練を積んだ4頭の犬による「動物介在療法」を行っています。週1回、医師や理学療法士が集まって、対象者ごとに個別の治療計画を立てます。
その治療目的は次の5つに分けられています。
・機能訓練の補助
・認知症の緩和
・失語症の改善
・生きがい療法
・ターミナルケア
緊張を和らげるといった心理的な効果とともに、犬を抱き上げる動作などが機能回復に役立つ、犬に話しかけたり、指示を出したりすることが言語訓練にもなります。
同ホームでは、2002年から2008年8月末までに347人に対して動物介在療法を実施し、248人に日常生活動作の向上や人との交流の活発化などの効果が見られたそうです。
「1対1で犬と接し、信頼関係を築くことで活動意欲が高まり、従来の医療では得られなかった治療効果が生まれたのではないか」と考えられています。
犬とのふれあいによって、活動意欲が高まるというのは、高齢者に限ったことではありません。
横浜市のあすなろ学校では、引きこもりの若者が聴導犬を育てることで、社会参加のきっかけをつかんでいます。
全寮制の施設で、ひきこもりやニートと呼ばれる若者が、24時間、担当犬と寝食をともにしながら、聴導犬へと成長させていくのですが、その過程で、自らも自信を取り戻していくというものです。
ブログ・カテゴリー「アニマルセラピー」
http://ameblo.jp/lessonwan/theme-10007723026.html
読売新聞 2009年2月17日 アニマルセラピー(上)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/kyousei/saizensen/20090217-OYT8T00614.htm
読売新聞 2009年2月18日 アニマルセラピー(下)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/kyousei/saizensen/20090218-OYT8T00638.htm
読売新聞 2009年2月1日 人物語
「訓練犬と24時間 心が育つ」