「人はなぜ動物に癒されるのか」 アレン・M・ショーン著 中央公論新社刊


愛犬コンシェルジュ~お散歩仲間の立ち話~-人はなぜ動物に癒されるのか


第6章 魔法のカプセルを探して


「食生活の改善」


健康は食生活で決まる。猫、ライオン、イルカ、ウォンバットあるいは人間であろうと同じことが言える。


ところが、獣医学部では医学部と同様、栄養に関する細部にわたる授業は十分に行われていないのが現状である。


新鮮な野菜や肉が、加工された食品と比べてどれほどメリットがあるとか、一般的な食材に対して有機農法による食材が優る点などについては授業ではまったく語られなかった。


そして学生たちはペットフード製造業者から情報を得る場合が多いのだ。私が記憶するかぎり、栄養に関して質問が持ち上がるとたいていの教授はこう言っていた。


「ペットフードのラベルに書かれた情報を読めばよい。知らなければならないことは全部そこに書かれてある」


しかし、ペットフードのラベルに記載されているのは、健康体のためのカロリー数と、糖質、プロテイン、脂肪の割合に関してだけである。


(中略)


私が目覚めたのはハリのトレーニングを受けていた頃で、加工された食品には自然食品にあるような「気」が存在しないことを教わった時である。


そのような食品には自然食品にあるような「気」が存在しない。農薬、人口調味料や保存料などがからだに与える有害な影響について読めば読むほど、獣医学部で学んだ栄養学に疑問を感じたのである。


仕事を始めてから何度も毛づやの悪い犬や猫、しまりのない体、アレルギー、耳の病気などを持つ犬や猫に出会ううち、さらに疑問を感じはじめたのだ。


たとえば、アレルギーによって被毛の状態が悪ければ、普通はコルチゾールを治療に使うが、その目的は炎症を鎮めることにある。


しかし、ほんとうの問題はアレルギーにあるのではなくて、からだに必要な脂肪酸が欠乏しているからではないかと私は考えるようになった。もし、この考えが正しければ、亜麻油かひまわり油のほうが治療薬としてよいのではないだろうか?


ある相談者が、いつもかゆみに苦しむ八歳の雑種犬を連れてきたことがあった。その犬の耳のなかは真っ赤で耳垢がたくさん付着しており、毛づやも悪くパサついていてフケに覆われていた。


皮膚の表面をこすって疥癬の検査をし、真菌性の病気がないかどうか紫外線検査をしたり、そのほかいろいろな検査を施したが、問題は何も見つからなかったのである。


生体組織検査やコルチゾールによる治療を試みる前に私はこう提案してみた。


「数週間だけ彼の食事内容を変えてみてはどうでしょうか」


私がすすめた食物とは、有機食肉、魚、鶏肉、七面鳥肉、未精白の穀物、さつまいも、そしてブロッコリーやさやえんどうなどの野菜類である。


一ヶ月もすると、その犬はすっかり見違える姿になった。被毛にはつやが出はじめ、かゆみも消え、耳垢も赤みもなくなったのである。


私が食事の改善を、症状緩和の手段としてすすめたのはこの時が初めてで、ハリが初めて効いた時と同様、効果があったことに少々驚いてしまった。


食事と健康の関連性を確信した私はその後、この方法によって症状が改善された例を何度も繰り返し目にするようになった。


(本文より抜粋編集)