(5)脂漏性皮膚炎とマラセチア感染症


中国のチベット高原が原産と言われるシー・ズーは、他の犬種に比べると、皮膚の表面を覆っている皮脂の分泌が多いと言われています。乾燥していて、寒さも厳しいチベット高原での暮らしに適応するために、シー・ズーは、皮脂の分泌が多い体質になったと考えられています。


そんな体質のシー・ズーにとって、日本の高温多湿な環境は、好ましいものではないようです。必要以上に分泌される皮脂をエサとする細菌が異常増殖しやすく、皮膚炎の原因になるからです。


人間と同じように、犬の皮膚の表面にも、1c㎡あたり約20万個に及ぶ数種類の常在菌がバランス良く存在していると言われます。これらの常在菌は、紫外線や有害物質から皮膚を守ってくれたり、病原菌が身体の中に入るのと防いだりしてくれています。

皮膚常在菌は、皮膚の脂肪分(皮脂)をえさとして食べながら、脂肪酸を排出しています。皮膚が弱酸性になるひとつの要素です。皮脂と皮膚常在菌とのコンビネーションが、皮膚を保護し、病原菌の感染などを防いでいるのです。


皮膚常在菌のひとつに、マラセチア・フルフルという真菌があります。皮脂の分泌が増えると、それを栄養分として異常に繁殖し、皮膚に炎症を起こします。


細菌やマラセチア(真菌)感染には、毛穴を洗浄するシャンプー、殺菌性シャンプー、保湿シャンプーを併用します。また、マラセチアを増殖させないように、体のべたつきを抑えるシャンプーを使うこともあります。


症状に合わせたシャンプー療法はそれなりに効果がありますが、薬用シャンプーは、その使用法をまちがえると症状を悪化させる場合もあります。強い脱脂作用や角質溶解作用を持つシャンプーなどは、適正な使用法を守らなければなりません。


トリクロサン、塩化ベンザルコニウム、酢酸クロルヘキシジンなどの殺菌剤が含まれている薬用シャンプーを、皮膚病が治癒した後も使い続けることは好ましくありません。


酢酸クロルヘキシジンは低刺激性の殺菌剤ですが、それを日常的なシャンプーとして使うことも勧められません。


酢酸クロルヘキシジンは、細菌性皮膚炎(膿皮症)などの治療に使用されるものです。日常的に殺菌剤入りのシャンプーを使えば、皮膚を健康な状態に保つ働きをしている皮膚常在菌まで殺すことになるので、皮膚にとっては決して良いことではありません。


お勧めしたいのが界面活性剤の成分としてラウロイル・メチル・アラニンNaを使っている天然のアミノ酸系シャンプー剤です。


一般のシャンプー剤の2~3倍の値段がしますが、最も刺激が低いとされているシャンプー剤です。人用のシャンプーとして開発されたものですが、皮膚の厚さが人間の1/5しかないとされている犬にとっては、好ましい低刺激性シャンプーと考えられています。


ラウロイル・メチル・アラニンは、価格が高いので、一般的なアミノ酸系のシャンプーの主剤として使われているのは、ココイルグルタミン酸TEAです。この界面活性剤でも、低刺激シャンプーとして評価できるので、次善の策として、お勧めできるものです。


犬用のシャンプーは、「雑貨」扱いなので、どんな界面活性剤が使われているかを容器に記載しているものは、まったくと言ってよいほど、ありません。そのなかで、レッドハートという会社が販売している「自然流」という犬用シャンプーには、成分表示がされていて、使っている界面活性剤もアミノ酸系です。