(56)人類の繁栄は犬のおかげ!?


古代エジプトの神話では、死者の魂を死後の世界の王「オシリス」のところに導く「アヌビス」は、山犬の頭を持つ神として描かれています。


古代ペルシャでは、死の間際にある人のところに犬を連れて行きました。犬には悪魔を退ける力があると信じられていたので、肉体を離れた魂に悪魔がとりつかないようにするためでした。


アメリカの先住民、ネイティブ・アメリカンの部族には、人間はオオカミから進化したという伝説が残っています。


また、彼らは、犬が月に向かって吠えている姿を見て、「犬は月からの使者」だと考えました。あるいは、犬が寝そべるときに、丸く円を描く習性から、「犬は太陽からの使者」とも言われました。


犬は、人類の良き友であったのですが、それだけではなく、ホモ・サピエンス(新人)が繁栄できたのは、犬のおかげだという説もあるのです。


カリフォルニア工科大学のジョン・オマール博士は、その著書「進化する脳」で、「ヒトと犬は、14万年前ごろに接触をするようになり、それ以後、よい関係を保ちながら、互いに繁栄してきた」と述べています。


犬は、その鋭い牙や鋭敏な嗅覚、そして忠誠心によって、二本足のひ弱なパートナー=ヒトをいつも助けてきました。そして、人類は、犬とつきあいはじめたおかげで、野獣に怯える生活から抜け出すことができたというわけです。


人類の繁栄につれて、犬たちは十分なエサをもらうようになり、暖炉の前でのんびりと寝そべっている生活に変わりました。そして、人間が、食べものや寝床を与えて飼い慣らしてしまった犬からは、動物が本来持っている好奇心や勇気が失われてしまったとも言われます。


(参考図書)

「ドッグミラクル」 ブラッド&シェリー・シュタイガー著 講談社刊


ドッグ・ミラクル