(52)待ち人来る
フィラデルフィアから東部行きの列車に乗るとサニバンクという町に着きます。
その町に住んでいたウィルソンは、カリフォルニアに引っ越すことになったので、飼い犬のコリー「ジャック」を親戚に預けていくことにしました。
しかし、ジャックは、新しい家で飼われることを受け入れず、戸締りされた元の家に戻って、テラスで暮らし始めました。
そして、夕方になると主人のウィルソンを迎えるために、駅に出かけて行くのでした。
いつもの列車から降りてくる乗客の中にウィルソンがいないことを確かめると、ジャックは誰もいない家に戻って行くのです。
ジャックは、食べ物を食べようとしなかったため、今にも死にそうに見えるほど、やせ細ってしまいました。
その日もジャックは、駅に出かけて行きました。
そして、列車から降りてきたひとりの乗客を見つけると飛びついて行ったのです。
その時のことを、ウィルソンは後にこう語っています。
「ジャックは、すすり泣いていたよ。それは、子どもが泣く声と同じだった。それに、まるで寒気におそわれたように、ガタガタ震えていたんだ。」
「もちろん、僕だって、鼻をかんだり、目をシバシバさせて、大変だったよ。」
事の真相は、こうだったのです。
近所の人が、ジャックのやつれ果てた様子を見かねて、カリフォルニアのウィルソンに電報を打ったのです。そして、ウィルソンは、カリフォルニアからフィラデルフィアへ、そしてそこからいつも利用していた列車に乗って、サニバンクに戻ってきたというわけです。
その後、ウィルソンはジャックを連れて、カリフォルニアに帰っていきました。そして、二度と愛犬を手放すことはありませんでした。
(参考資料)
「あなたのペットの超能力」 V.ガディス/M.ガディス著 白揚舎刊