(50)別れのあいさつ
1987年10月14日、米国カリフォルニアのサンディエゴに住むカレン・ブラウンは、こんな話をしてくれました。
私は、老猫のジュピターが、耳をふせて、フーッと唸っているのに気づきました。
廊下に何か怖いものでもいるような怯え方だったので、立ち上がって見に行くと、そこにいたのは、6年前から飼っているテリアのジッグスでした。
私は、思わず、笑い出してしまいました。
次の瞬間、呼び鈴がなりました。私が玄関まで行って、ドアを開けると、近所に住んでいるハンク・スワンソンが立っていたのです。
そして、彼の腕の中には、白と黒の模様の小さな犬の死骸があったのです。
「お気の毒です。トラックがすごいスピードで走ってきて、ジッグスをはねたのです。ジッグスは即死でした。苦しみはしなかったのですよ。」
私は、ハンクのその言葉にとまどい、さっき、廊下でジッグスを見たばかりだから、そんなことはあり得ないと思いました。
でも、目の前にあるのは、まちがいなくジッグスの遺骸だったのです。身体の特徴も、つけている首輪からも、それは否定しようがなかったのです。
私は泣きだし、猫のジュピターは、戸棚の後ろに隠れてしまいました。
そう言えば、廊下で見たジッグスは、頭を下げて、どこか悲しそうな、妙な様子だったことを思い出しました。
(参考資料)
「犬たちの知られざる超能力」 ジョエル・ドゥハッス著 早川書房刊