(46)恩を忘れなかった犬


ホームレス犬、スコティシュ・テリアのボビーは、あちこちで、ゴミを漁って生きている、薄汚れたみすぼらしい犬でした。


そんなボビーを不憫に思ったオールド・ジャックという年老いた羊飼いが、近所のレストランから残飯をもらってきては、ボビーに食べさせてくれたのです。


人間は自分をいじめるものだと学んでいたボビーにとっては、その老人がかけてくれた情けは大きなものでした。


老人が亡くなって、墓地に葬られると、ボピーはその墓の前から動こうとせず、墓守りが追い払おうとして、蹴ったり、石を投げたりしても、墓から離れることはなかったのです。


町へ食べ物を漁りに出かけても、食べ物を見つけると、それを墓まで持ち帰って、そこで食べました。


次の年の冬、町の人たちは、ボビーのために小屋を立ててやりました。


ボビーは、墓を14年間も守り続けて、亡くなりました。


その忠誠心に心を打たれた町の人たちは、広場にボビーの像を建てました。その像は、今でもスコットランドのエディンバラ、グレイフライヤー広場に建っています。


そして、ボビーの亡骸は、オールド・ジャックの隣に眠っています。


この話を聞いたスコットランドの教会会議が、ボビーをオールド・ジャックのかたわらの聖別された土の中に埋葬することを許可したのです。


(参考図書)

「地上の天使たち」 ステファニー・ラランド著 原書房刊


地上の天使たち